目黒蓮が体調不良で撮影を休むために特別編を放送ってニュースを知り、特別編ってここまで放送してきた分をダイジェストにしてまとめるんだろうなくらいに思ってました。
ところが、このドラマはそんな手抜きなことをしてきませんでした。完全新撮で水季(古川琴音)と津野(池松壮亮)の「恋のおしまい」を描くという中身の濃いスピンオフをわざわざ作ったのです。
しかも、目黒蓮も出演していて。
これってどのタイミングで作ると決め、どのくらいの期間で作ったんでしょう?
いずれにしても急ピッチで作ったものでしょうが、そうは感じさせない丁寧な仕上がりに感心してしまいました。
フジテレビ 月曜21時
「海のはじまり」特別編
「恋のおしまい」
主演…古川琴音、池松壮亮
脚本…生方美久
演出…山岸一行
第7話では津野がフィーチャーされ、津野が水季を支えるようになったきっかけや亡くなってからの悲しみ、喪失感が描かれましたが、
水季と津野の間に恋愛はあったのかは、
深くは描かれず、訃報にふれて号泣する津野に、少なくとも津野は愛してたんだろうなと感じさせられてはいました。
脚本の生方美久にしたら、そこも丁寧に描きたかったかもしれませんが、2人のことを描くと主役の夏をないがしろにすることになるので抑えたはずで、
目黒蓮には申し訳ありませんが、しっかりと描けるチャンスを得たということになります。
この特別編のおかげで水季や津野の分かりにくい部分はより明確になり、共感しやすくなりました。
特に津野のことを私めの妻は「いい人なのにね~」と夏と肩を並べるくらい好きになったようです。
(特に池松壮亮の声をベタぼめです)
前置きが長くなりましたが、この特別編は海が4歳くらいの話で、水季と海をサポートし続けてきた津野に対して、水季も好意を抱いている時期を描いていました。
津野はあまり恋愛にガツガツしているタイプではないので、恋愛関係には踏み込めてはいなくて、
水季は津野のためにおにぎりを作ってきたし、津野は水季の好きなグミを買ってきたのに、他の物を食べ始めたり、既に買ってたりしたら引っ込めてしまう…そんな関係性でした。
そんな中、津野は勇気を出して2人きりのデートを提案します。
海を育てるために自分が恋愛をすることを自制してきた水季でしたが、津野には好意を抱いているので、
津野の言う通りに両親に頼って海を預けて、津野とデートをすることに。
デートに向かうバスの中での会話がまず印象的でしたね。
津野の名前は晴明で「はるあき」なんですが生まれたの春でも秋でもなく、1月で冬ってこと。
娘になぜ海と名付けたかについて、夏が好きだから?と聞かれ、海が好きだからと答えた水季には、父親が夏だからと言えない含みがあったこと。
2人の会話には時おり夏の影がちらつくんですね。特に水季には。
その微妙な感じが絶妙な脚本でした。
水季が何でも自分で決めたいタイプと知っていて、デートの行き場所をあらかじめ決めてしまわず、水季に決めさせるあたりも津野の寛容さを感じました。
そうして行ったプラネタリウムでつい寝てしまう水季。津野に気を許しリラックスできている証拠ですね。
見終えて靴紐を直す津野の背中に水季がよりかかるシーンは名シーンでしたね。
子育てから離れて自分の時間が持てたこと、かつての夏との日々のようなときめきが持てたことに感謝の念と、1人で頑張ることに疲れ津野によりかかりたい気持ちが動作であらわされていて、水季らしからぬ姿にドキっとしました。
水季は100均で買ったペディキュアを塗った足を津野に見せ、可愛いと言ってもらえたあとにこう言います。
「爪に色塗ったの大学生ぶりで。子どもいると自分に色が無くなってきます。部屋とか子どものものでどんどんカラフルになっていくのに、通帳とか見ちゃうと人生お先真っ暗みたいな。頭の中真っ白みたいな…」
この色が無くなるって表現にしびれましたね。やはり生方美久ってスゴい脚本家だと思い知らされました。
家に帰ってやりたいことがあると言われ、津野も一緒に水季の部屋へ。
一緒におにぎりを作るシーンはほのぼのとして良かったんですが、勢いで津野が
自分には貯金もあるし、三人で暮らさないかと提案しますが、それは断られてしまいます。
津野と一緒になったら2人きりになりたいとか、海が邪魔だとか、2人の子どもが欲しいとか考えるのが怖いって言われてしまうんです。
こう言われてしまうと津野も引かざるをえませんね。
津野って人として好きだけど恋愛対象かっていうとそこまでではないのかもしれません。
津野と水季の恋はおしまいとなったのでした。皮肉なことにその同じ時期に夏は弥生(有村架純)との恋が始まっていました。
何か良質な短編小説を読んだような特別編でしたね。
本編では見せたことない表情をさまざま見せてくれた古川琴音と池松壮亮に賛辞をおくります。