コロナ禍を乗り越えてようやく平和な世の中を取り戻したはずなのに、もしもまた新たなウイルスが感染しパンデミックになったらどうなるのか?
しかも、そのウイルスに「歌舞伎町ウイルス」というありがたくない別名がつけられてしまったら…
奇才、宮藤官九郎はそんな近未来を描くことで、改めてコロナ禍のことを再検証するという奇抜なアイデアをこのドラマの終盤に持ってきました。
フジテレビ 水曜22時
「新宿野戦病院」第10話
主演…小池栄子、仲野太賀
脚本…宮藤官九郎
演出…澤田鎌作
アメリカで発生した新型のルミナウイルス日本人初の感染者は、アメリカ旅行から帰国した歌舞伎町のホスト凌介(戸塚純貴)でした。
至って元気そうに見えたのですが、大仰な扱いで隔離され、心配して駆けつけた母親も会うことすら許されません。
たまたまその勝どき医療センターに研修で来ていたヨウコ(小池栄子)は、隔離病棟に潜り込んで、テレビ電話で会話をさせてあげます。
コロナより早く、発症5日後には死ぬというWHOの発表通りに凌介はあっさり死んでしまいます。
コロナ禍では多くの人が感染した家族を面会も看とることもなく…でしたよね。
SNSでは第1号は歌舞伎町のホストというのが特定されて拡散し、ルミナウイルスは別名歌舞伎町ウイルスと呼ばれることに。
まごころ病院では感染患者を受け入れるか否かでもめます。
高齢者の母親のいるしのぶ(塚地武雅)や幼い子のいる横山(岡部さとし)は院内感染を恐れます。
患者を受け入れることにしたので2人は帰宅せずホテルに寝泊まりして働き続けることになります。
今回は随所に声高ではなく、コロナ禍であったことをチクチクと皮肉るセリフや描写がありました。
例えば、感染患者を受け入れると申告すれば補助金が出て、実際は受け入れずに補助金で儲かった病院があったこと。
屋外でもマスクをつけてるなんてナンセンスなこと。
外国人を目の敵にして、排斥しようとする自粛警察が横行すること。
ECMOの数が足りず、それが空くか空かないかで生死が左右されてしまうこと。
そして、何より痛烈だったのは感染者が出たからと悪い噂がたつと人が寄り付かなくなり、飲食店も風俗店も休業に追い込まれ、
トー横キッズも路上売春もパッタリいなくなったことでした。
自分がやってきたNPOの活動は何だったのかと虚しくなった舞(橋本愛)のセリフが印象的でした。
「人間の言うことは聞かないのに、ウイルスの言うことは聞くのかよ!」
そして、無症状だったために感染しても
気づかず父親の啓三(生瀬勝久)にうつしてしまったことを詫びる享(仲野太賀)に対して叱咤するヨウコのセリフも良かったです。
「謝るな、軽々しく。すいませんって何なん?お前悪くない、誰も悪くない。人間もウイルスも生きようとしとるんじゃ!」
「お前ウイルスに勝った、親父はウイルスと戦っている、それだけ。誰も悪くない」
このパンデミックをいかに乗り越えるのか最終回に期待します。
第10話の評価は…8