初回に洸人(柳楽優弥)と美路人(坂東龍汰)の間でこんな会話がありました。
「あっ、カモメ」
「違います。カモメ科のウミネコです」
「海じゃないんだけどねぇ…」
「海じゃなくてもウミネコはウミネコです。どこを飛ぶかはウミネコの自由です」
初回を見た時は美路人は動物に詳しいんだなくらいに聞き流したセリフが、最終回では重みをもったセリフになるとは…。
緻密に構築されたドラマだったのだと感心しました。
TBS 金曜22時
「ライオンの隠れ家」最終回
主演…柳楽優弥
脚本…徳尾浩司、一戸慶乃
演出…坪井敏雄
このドラマは「ヒューマンサスペンス」というカテゴリーにあてはまるようでしたが、もっと正確に言うと「サスペンス要素が強いホームドラマ」でしたね。
最終回は、前回でサスペンス部分はほぼおさまったので、ホームドラマ色の濃い内容となりました。
美路人や愛生(尾野真千子)に何も告げずに洸人はふらりと東京へ行ってしまいます。
急に洸人がいなくなったことで美路人はうろたえます。
グループホームの体験入居の時に、家族にめんどくさいと思われてる人がいて、その言葉が残っていて、
美路人は洸人が自分をめんどくさいと思っているのでは?と不安になります。
幼い頃から美路人のために、自分がやりたいことも抑えてきた洸人は、自分はこのままでいいのかと考えてしまったのでした。
東京でつい足が向かったのは美路人のために中退せざるをえなかった大学でした。
そんな洸人に、工藤(桜井ユキ)は「新しいことに挑戦するのに、今更ってことはないですよ」と背中を押します。
家に戻り、愛生から美路人が不安に思っていたことを聞いた洸人は、
貞本(岡崎体育)の結婚10周年パーティーに招かれ、スピーチすることになり、美路人に向けて自分の思いをしっかりと伝えます。
「弟は僕にとってずっとずっと自慢の家族です」
このシーンの淡々としながら濃い愛情をセリフに込めた柳楽優弥と、目や口の動きでリアクションする坂東龍汰により、涙を誘う名シーンになりました。
思い立ってみっくんは洸人と愁人を連れて海岸の堤防に描いた三匹のライオンの場所に行きます。
その絵に3人がそれぞれウミネコを描き足そうと言うのです。
ここで冒頭に描いたウミネコのセリフの意味が活きてきます。ウミネコは自由に飛びたい所へ飛び立つという象徴なんですね。
ライオンはみっくんがよく使っていた「プライド(群れ)」に一緒にいるということで、そこにいることに縛られてしまうことでもあるのです。
結局、洸人は大学を再受験して合格し、役所を辞め東京の大学に通うため家を出ることに。
美路人は体験入居したグループホームに1人で入り住むことに。
愁人(佐藤大空)は小学生に。
愛生は洸人や美路人がいなくなった家に愁人と住み、寅吉(でんでん)の店を手伝うことに。
祥吾(向井理)には判決が下され、刑に服して更正していくんでしょうし、
獄中にいる柚留木(岡山天音)に洸人らの家族写真が送られ、もう柚留木も家族の一員なのだと思わせました。
それぞれが踏み出していく…
家族とうまくいった人もいかなかった人も…
このドラマらしい終わり方でしたね。
最終回の評価は…8