あれっ?ドラマミタローは朝ドラや大河の記事は書かないんじゃないの?と面食らっておられる方もいるのではと思いますが、
大河に関しては書いてないわけではないんです。と言っても2016年の三谷幸喜脚本、堺雅人主演「真田丸」が最終回まで記事を書いた最後なんですがね。
なかなか1年の長丁場を書き続けるのは大変でして…
同じ三谷幸喜脚本の「鎌倉殿の13人」や宮藤官九郎脚本の「いだてん」も書こうとはしたんですがダメでした。
今年はひさびさ書いてみようかと初回を見て思い立ちました。どこまで続けられるかわかりませんが…。
NHK 日曜20時
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第1話
主演…横浜流星
脚本…森下佳子
演出…大原拓
なぜ書こうと思ったか、それは森下佳子脚本、大原拓チーフ演出、藤並英樹制作統括というトリオは、傑作だったNHK版「大奥」と同じメンバーだからです。
「大奥」では男女逆転の大奥での男女の生きざまを見事にあぶり出してくれましたし、NHKらしからぬラブシーンなど果敢な試みもしていました。
「大奥」こそ1年かけて大河でやってくれたら良かったのにと思えたほどです。
「大奥」スタッフが今回大河で挑むのはとかく戦国時代か幕末に偏りがちな大河では初めて取り上げる江戸中期で、しかも主人公は政治家でも誰もが知る著名な歴史上の人物でもありません。
元禄と並んで江戸時代で文化が栄えた化政期の文化の仕掛け人で、今の言葉なら「メディア王」だった蔦屋重三郎という男が主人公なんです。
これまたチャレンジングだなと感心しました。しかも舞台の中心となるのは吉原の遊郭です。ここもまた目新しくて私めの心をとらえました。
主人公が歴史上の人物だととかくその幼少期からスタートしがちですが、このドラマはそうではありません。
明和の大火で吉原も火に包まれてしまう…そこを主人公の重三郎(横浜流星)が幼なじみの花魁花の井(小芝風花)たちと必死に逃げ出す緊迫感のあるシーンからスタートしました。
主人公の重三郎は両親と生き別れたあと、吉原の引手茶屋の駿河屋(高橋克実)に拾われ養子となり、今は蔦屋という茶屋を営みながら吉原で働く女性たちへの貸本業もしています。
このドラマ、ユニークなのは吉原という幕府公認の遊郭のありようを事細かに描いているところで、重三郎が営む茶屋は吉原に来慣れていない客を案内する茶屋で、引手茶屋は花魁を呼べるような常連や上客を相手にしていました。
吉原に身を置く女性たちも格差があり、
花魁から安く身を売る女郎まで店の格が変われば雲泥の差がありました。
そんな吉原で幼少期に重三郎は花魁の朝顔(愛希れいか)に可愛がられ、本を読む楽しさも教えてもらいました。
病を得て、今は花魁から女郎へ身を落としている朝顔のために、お世話になった花の井は弁当と薬を重三郎に持って行ってもらい、重三郎は本を読み聞かせます。
しかし、朝顔は亡くなり、身ぐるみ剥がされて裸で埋葬されそうなところを、重三郎が駆けつけ着物を掛けてあげます。
田舎から口減らしで家族に仕送りするため売られてきた遊女たちの末路は悲しいものでした。
幕府公認でしきたりの厳しい吉原は客足が落ち、品川や千住、新宿などの宿場町にある遊郭や岡場所に客を取られていました。
そのため、吉原の下層の女郎たちは、大した食べ物も与えられず苦しい暮らしを強いられていたのです。
朝顔の死もあり、そんな窮状を憂いた重三郎は引手茶屋や女郎屋の主人や女将たちの集まりに顔を出して改善を頼み込みますが、
遊女たちなど消耗品のようにしか思ってない彼らからは一喝され、相手にされません。
重三郎は熱血漢でありながらしたたかな知恵者でもあり、顔見知りの豪商にくっついて老中田沼意次(渡辺謙)の屋敷に入り込み直談判に及びます。
宿場町や岡場所への警動(取締り、摘発)を頼みますが宿場町の経済効果のため、それはできないとつっぱねられ、
むしろ、客を呼ぶ努力を何かしているのか?と逆に問われてしまいます。
「西郷どん」の時の島津斉彬も良かったですが、やはり渡辺謙が出ると迫力とオーラがスゴいですね。
その胸を借りる横浜流星の目からウロコの表情が良かったです。
横浜流星はストレートな演技をする人でしたが、変化球も身につけてきていて、役者っぷりが上がりました。
映画「正体」も高評価ですし、この夏公開の「国宝」で既に渡辺謙と共演済みです。
その「国宝」で共演した吉沢亮が「青天に衝け」の渋沢栄一役でその成長ぶりを好演したように、メディア王になっていく重三郎の成長ぶりを横浜流星がいかに演じるか楽しみです。
渡辺謙のみならず、小芝風花の花魁っぷりも良いし、安田顕の平賀源内も楽しみ。水野美紀、飯島直子、安達祐実たちのしたたかそうな女将さんっぷりも注目です。
第1話の評価は…8