小鳥たちの 群れが
南風に 乗って
飛んでゆく
キョロキョロ しないで
まっすぐ 前を見て
飛んでゆく
新しい家に 向かって
みんなで 一直線に
飛んでゆく
鳥になって
高く 高く 空を飛んだなら
どんな 気分なんだろう
思い描いて みるだけで
ボクの中の 命が
急に ドクドク 動き出してくる
小鳥たちは あたらしい家に 着いたら
どんな おしゃべりをして
眠りに つくんだろう
朝 めざめたときは 絶好調な気分だったのに
ボクの心の中は 雲行きが あやしくなってきた
あやしい なんてもんじゃない 暗い雲にどっぷり 覆われた
きみは今日 茶色のあいつと
いっしょに 散歩してるんだね
先週 土曜日に遊びに行ってもいい?と 訊かれたとき
どろんこだったボクは 土曜日は都合がわるいんだと
ウソを ついた
シャンプーして おもちゃも片付けてから と
かっこつけて しまった
かっこつけて タイミングはずすなんて かっこワルー
だけどさ すぐに ほかのやつと仲良くするきみなら
もういいよ!
強がってみても 目できみを追いかけてる
・・・ 未練のかたまりのボク ・・・
サンドイッチを作って 箱根までドライブ
休日の温泉で のんびり
湯上りに 川のせせらぎを 聴きたくて
急いでいるときに かぎって
ゆで卵の 殻が うまく剥けない
細かく割れた殻が ボロボロこぼれる
イライラ イライラ している頭に ふと浮かぶ
ニワトリは あの小さな体で このたまごを産んだ
その大変さ その有難さ その申し訳なさ
朝と夕方の いつもの ごはん
ときどき ヨーグルト
ときどき キャベツやトマトやブリッコリー
もっと ときどき 桃やイチゴや大好物のチーズ
食べたものが ボクになる
ボクの骨や肉や血やこころをつくる
長い耳や 短いしっぽの毛 になる
だけど 食べたものだけじゃなくて・・・
散歩のとき クンクンした 草のいい匂い
ここにずっと いたいなと思った ドッグラン
いい子だねと なでなで してくれた人の手のひら
はじめて 雪を見た日の ドキドキ
はじめて 海ではしゃぎまわった日の きらきら
たっぷりの 愛情につつまれている 日々
溢れている 陽射しにつつまれている 日々
そういうこと すべてが ボクをつくっている
心配 ご無用
それが口癖の 親戚の叔父さん
昼過ぎ ひょっこり 遊びに来た
手土産に ごぼう味のかりんとうを持って
叔父さんの好きな うす茶を点てて
かりんとうを いっしょにいただいた
開け放った窓から カッコウの鳴く声が聞こえる
悲しみの多い 数奇な運命
叔父さんに会うたびに すっと心に浮かんでしまう言葉
60才を過ぎた今では そんな過去のかけらもまとわず
淡々と 穏かな日々を過ごしている
陽に焼け ぷっくりとしている 叔父さんの手
近所に住む人の たわいない笑い話をしながら
その手で かりんとうを食べ お茶をすする
陽だまりの中にいるような 温かい気持ちなのに
急に泣きたく なった
でも 笑った 笑って かりんとうを食べた
叔父さんが帰った後 ひとり うす茶を飲みながら
嬉しいのか 悲しいのか わからない心模様になった
たぶん・・・
こうして 日々 幸福を深くしているのかもしれない
雨の匂いが かすかに伝わってくる
あじさいも カタツムリも
なんだか うれしそうに 見える
ボクはといえば
一瞬 泣きたくなってしまう
かみなりが もう 遠くの空で
なり始めている
目をつむると かみなりの爆音のことを
想像してしまう
まるで
森の中で 眠っている虎に 遭ってしまった
みたいだ・・・
かみなりさま どうか 少しでも早く
眠りについてくださいね お願いですから