随筆・「年賀状」 | 失語症作家 小島恒夫のリハビリ・ノート!!

失語症作家 小島恒夫のリハビリ・ノート!!

自ら作家と名乗る人間にろくな者はいないでしょう,他の方はともかく。私は2000年、脳出血を患い失語症になりました。そしてリハビリの一環として文章書きをしています、作家のように――。
何はともかく、よろしく!  (1941年生まれで、現在・80歳になる単なるじじい)

 

 

 

 

 「年 賀 状」

 

 

 

「輝かしい新年をお迎えのことと謹んでお慶び申し上げます。昨年は何かとお世話になりまして誠に有難うございました。本年もよろしくお願いいたします」

 

 

 

 とまぁー、こんな言葉を並べてみるが、この歳になると、新年が特別に目出度いこともなく、慶んでいることもない。

 

 

「そんなことは、言葉の綾」

 

 

と言われそうだが、気にするとそれなりに気になってしまうから困ったことだ。

 

まして昨年、年賀状を送った家族から本人死亡の忌中ハガキを貰ったり、今年も送った後に、電話や手紙で、「おれ八十を超えたからさ、年賀状を止めたよ、ごめんな」、と断られたときは、しかもその数が増えると何とも暗い気持ちになるし、切ない気持ちになる。

 

 

 また、最初からは年賀状を書かず、貰ったら、その人だけに出す――。と考えられる人が多くなったように思う。もっともそれは私の推測で、私はその人にとって員数外の人間だったのかもしれない。

 

 

 

それに私は4年前から、年賀状を元旦に書くようにしている。理由は、例えば12月の中旬に書きポストに投函しても、配られる元旦までに万が一という保証はない。

 

「ええ⁉ あいつ死んだの。俺、年賀状を貰ったよ」

 

と、不思議な気持ちになるだろう。

 

 

心臓と頭に持病のある私は、十分に想像できる。そんなことを考えると最善の策と思っているが、現在生存しているから徒労には終わっている。

 

それに今の若者はメールで全てを済ませから年賀状の未来は暗いものを感じる。

 

 

 

 

 そして年賀状ハガキはお年玉付きになっているが、今まで、ろくなものが当たったためしがない。末等の切手シールの1、2枚で、それ以上の景品を貰ったことが無い。

 

 

賀状を送ってくれた人が悪いのか、それとも私に籤運が無いのか知らないけど、過去から現在までの経緯である。

 

 

それでも抽選日にはハガキを取り出して、1枚1枚調べている自分が情けない。ワクワクしている気持ちが情けない。

 

 

 

 

 新年早々泣き言は云いたくないが、81歳が近づいている今、口から食べ物が無意識にこぼれてしまうし、他人の話が聞きにくくなっている。何度も訊くのは失礼だから只々愛想笑いで誤魔化しているが、話の約三割は分かっていない。

 

 

毎日が、嫌な言い方をすれば「あの世へ行くまでの暇つぶし」だが、こればっかりは、神社やお寺でお賽銭を入れても治らないだろう。

 

 

1年の計は元旦にあり――。と言われるがそんなことは、4、50年前の話で、今更計画を立てても身体がいうことを利かない。

 

無いない尽くしでしょうがないので宝くじを買っても、籤運のない私が買うのは先が知れる。

 

まあ、変な気持ちを起こさずオミクロンのテレビを見ながら寝るのが無難だろう。

 

 

 

 しかし、こんなバカな文章を書いても、真面目に読んでくれるのは、「河童の会」の人たちか、13、4年前から同人になっている「土曜の会」の人たちで、その人たちに、足を向けて寝たら罰が当たるだろう。

 

 

いやいや、真面目に読んでいるようで腹の中では、馬鹿な奴だと笑っているかもしれない。それも仕方がない。

 

両会の人たちは文学を標榜しているのだから、正月とはいえ、こんな漫談話を聞かされたら参るだろう。

 

 

 

 それよりもこれから一年。

 

 

昨年大リーグで大活躍した大谷翔平選手と、前頭2枚目まで上った「宇良関」の取り組みが楽しみである。

 

 

エンジェルス球団もトラウトが負傷癒えて戻るだろうし、穴と言われた中継ぎピッチャーの補強も完備されただろう。

 

大谷選手も昨年の活躍で自信を深めたと思うから、鬼に金棒、かなりの成績が期待できる。

 

 

宇良関も、やっと元の地位に戻れたと意欲を増していると思うから、「足取り」や「いぞり」といった荒業で横綱、大関を苦しめられると想像できる。

 

万が一、この地位で10勝くらい出来たら、大変なことになる。三役は勿論、大関の足掛かりになるかも知れない。

 

 これから1年、寝ちゃあいられない。

 

 

 

『頑張れ大谷‼ 頑張れ宇良‼ 俺がついている』

 

およまつさま