私めは新卒採用の面接官をやることがよくあって、その際学生に逆に質問をさせるというのをやります。
するとよく出る質問に、
「テレビの仕事をしてて良かったなと思うのはどんな時ですか?」
というのがあります。
まぁ彼らにして見れば、テレビマンってツラい仕事らしいけど、アンタは「何のために」やってんのか?
聞きたいわけですよね…
今回のこのドラマも同じ問いかけがフェローたちに突きつけられました。
過酷な労働環境の中で、彼らが医師として働く理由とは何なのか?
フジテレビ 月曜21時
「コード・ブルー」第8話
主演―山下智久
脚本―林宏司
演出―関野宗紀
4人のフェローと1人のナース。彼ら、彼女らはそれぞれに悩みを抱えて、仕事を続けています。
父から母の自殺の真相が、自分が生まれたからだと知った藍沢(山下智久)。
心に重い十字架を背負わされたわけですが…
それでも藍沢が医師を続けていく理由は…?
今回の集団食中毒の患者の中の、おしゃべりなフォワードの子に教えられるのですが…
こんな俺が医師であることに喜んでくれる人がいる…
藍沢にとって、それは祖母の絹江。おばあちゃんに育てられた藍沢は、おばあちゃんを喜ばせるためにこれまで懸命に勉強してきて医師になったのです。
退院していく絹江に藍沢が語りかける言葉は泣けました。
これまで母の死のことを隠してきて苦しかったろう…もうこれからはその半分は自分が背負うよ…
ばあちゃんに喜んでもらえるような医師になる…
私自身もばあちゃん子だったので、前シリーズの時も泣けたんですが、この2人のからみは泣けてしまうんです…ただ単に…
一方、父が末期がんだと知った白石(新垣結衣)。
元気な内に会っておかなければ…と休みを取って帰省しようとするのですが…
仕事がたてこんでしまい帰るのをやめます。そのことを電話で父に詫びるシーン。これも良かったですね…
白石は父の姿を見て父のような医師になりたいと思って、この道に進んだのです。
仕事を優先させ帰って来ない父を待っていた娘に、何度も約束を破ったことを詫びる父。
でも今度だけは約束を守ってお前が立派な医師になるのを見届ける、それまでは生きてるよ…
ホントは帰ってきて欲しいのに、医師となるため懸命な娘に帰って来なくていいと言う父の複雑な思い。
父のような医師になることが白石にとって、医師を続ける理由に他ならないのです。
淡々としたやり取りの中に深い親子の情愛が感じられる名シーンでした。
そして冴島(比嘉愛未)は、自分にとっての光だった悟史を喪った悲しみからまだ抜け出せずにいます。
そんな冴島を立ち直らせたいと願う藤川(浅利陽介)は、梶(寺島進)のアドバイスどおり、何かにつけては話しかけます…
藤川の努力が痛ましくも見えますが、時が経つのを待つしかないんでしょうね…
何せ梶は奥さんをゲットするのに2年以上も声をかけ続けたんだそうですから…
しかし、痛ましさで言ったら、緋山(戸田恵梨香)が最も痛ましく、医師を続ける理由を見失ってしまいました。
脳死になってしまった少年を救えなかったから、せめて母親に最期に希望どおり息子を抱かせてあげようと、同意の上で管を抜いたのに…
この母親、医療過誤で訴える兄に従い、全く緋山を弁護せず黙っているのです…
患者がもう信じられず、怖い…って緋山の傷心もわかりますよ。
患者やその家族に「ありがとう」と言ってもらう…その喜びで辛くても続けられるというのがあるはずなのに…
よりによって、人殺し呼ばわりされてしまうとは…
これ以上の悲しみはないはずです…
緋山の心の傷はいかに癒されるのでしょう…?
彼女の抜けた穴を埋めるため、無理をした田所部長(児玉清)が倒れてしまいました…
次回もツラい展開が待っているのでは…
今回の評価は…
相変わらず濃密な中身のドラマです。
いろんなことを考えさせられます。
ところで、冒頭に書いた学生からの質問に私めは、こう答えます。
視聴率なんて得体の知れないものではなく、実際に自分が作った番組を見た人から直接反応を聞いたり、感想を読んで、喜んでもらえたり感動してもらえたと実感できた時です…と。