見ていてこれはとてもシビアな「二十四の瞳」だな…と思いました。
小豆島の子供たちが戦争の荒波に飲み込まれたように、
今回のドラマの舞台となる東京・蒲田の少年たちも、多くが戦争によって人生を狂わされます。
そして、このドラマがシビアなのは、軍国主義を生徒たちに叩き込んだ教師に、いかに間違っていたかを戦後突き付けるところにあるのです。
TBS 5日 21時~
「ブラックボード~時代と戦った教師たち」第1夜 軍国主義【未来】
主演…櫻井翔
脚本…井上由美子
演出…平野俊一
櫻井翔演じる白濱正平は、軍国主義の思想にどっぷりはまっていて、自らが出征するにあたり生徒たちに訓示をします。
お国のために戦地におもむき鬼畜米英を駆逐せよ…
それなくして君たちの「未來」はない…と。
その言葉に感化され、自分の夢を捨てても戦地に行くと意気込みを語る教え子たちを正平は誉めそやし…
逆に反戦的なことを口にする武文(中村蒼)は殴って叱りつけます。
そうして正平は戦地へ。戦いの中で被弾した右手を失い、自決もままならず捕虜生活の末に、
終戦から2年後にようやく帰国します。
空襲を受け焼け跡から復興しつつある蒲田。
兄も妹(安藤サクラ)の夫も戦死していて、家には母(名取裕子)と兄嫁(宮沢りえ)、その息子(鈴木福)、妹が暮らしています。
食い扶持のために遊んでいるわけにもいかず、元いた学校でまた教師として働くことにする正平。
自分が出征前に教えていた教え子の一人秀雄(菅田将暉)に会ったのをきっかけに、今彼らがどうしているか気になり、同窓会を開くことにします。
空襲で家族を失い、町工場でこきつかわれている秀雄をはじめ、今では革命思想家になった武文など数人が集まります。
しかし、志願して軍隊に入り盲目になってしまった者、戦地での死の恐怖から心が壊れた者、予科練に入り移動中に原爆で死んだ兄の遺影を持ってきた妹…
正平があおったために彼らは…
武文は容赦なく正平を責め立てます…
打ちのめされる正平…
櫻井翔は彼自身、至って真面目で優等生的なところがあって、そんなまっすぐさゆえに軍国主義にどっぷりつかってしまった男の役は適役で…
そんな男が民主主義教育に戸惑い…自らのおかした過ちに苦悩するさまが、ストレートに胸に迫りました。
ラスト近く、再び教え子たちを集め、ぶざまな姿をさらしてでも教壇に立ち、今度戦争が起きても「生きろ!」と言い続け、教え続けると涙ながらに語るシーンは名シーンでした。
小細工をしないストレートな力演は櫻井の良さを引き出したと思います。
教え子たちも、中村蒼、菅田将暉、太賀、野村周平らこれまで注目してきた力のある人たちで、シーンの密度を高めていました。
正平を取り巻く女優陣も、名取裕子の貫禄と包容力、宮沢りえの清楚で古風な美しさ、
安藤サクラのふてぶてしいたくましさ
それぞれ本領発揮で好演していました。
しかし、せっかく教壇に再び立つことにしたのに、傷がもとで5年後に35歳の若さで死んだというナレーションがズシリと重く響きました。
「未來」と旧仮名で黒板に書いた文字が、ラストは「未来」と変わって書かれるという…黒板のうまい使い方に感心しました。