どんな終わり方をするのかが、最終回の前の回になっても予想しづらかったこのドラマ、なるほどこういう終わり方をするのかと納得の展開ではありました。
フジテレビ 火曜22時
「ゴーストライター」最終回
主演…中谷美紀
脚本…橋部敦子
演出…土方政人
前回のラストではリサ(中谷美紀)が書いた小説の著者名を由樹(水川あさみ)が自分の名前に変えてしまうのか?という終わり方でしたが、
良心がとがめた由樹はそんなことをせず、リサの名前のまま神崎(田中哲司)にリサの小説を出してほしいと頼むのでした。
しかし、それをはねつける神埼。
そこから散々リサと由樹をいいように利用し、自分は出世してその地位を守った神埼への逆襲が始まります。
小田(三浦翔平)が専務(石橋凌)に直談判し知恵をつけてもらって、小さい出版社から自費出版でリサと由樹の共著の本を出し、それが売れた勢いで駿峰社からリサの本を出すということにしたのです。
リサと由樹とがそれぞれの視点で描く題して「偽りの日々」という小説。
これは予想外の展開で、そう来たか…とワクワクしました。
2人で神埼の鼻をあかした…という形になったのです。
雑誌とかに出てもてはやされている神埼への専務の嫉妬がからんでいるのが面白かったです。
男の男への嫉妬というのはとかく厄介で怖いものなのです。
…ってことで、また小説家として復権したリサ。
ラストのナレーションは意味深で印象的な言葉でした。
「偽りのない人生などないし、偽りのある自分も本当の自分だ…」
フィクションという「虚」を書くことをなりわいとする小説家が自分というものの「虚」と「実」の間で揺れ動いてしまったがために起きたドラマ。
それがこのドラマだったのだな…と改めて思いました。
認知症の母親(江波杏子)もどこまで分からないのか分かっているのかも最後まで分からなかったし、息子も明確に母親への愛情を肯定はしなかった…
リサと神埼の関係にも何か結果が出たわけではない…そんな曖昧さを残しながらも、何かおさまるところにおさまった穏やかな充足感、そんな最終回でした。
このドラマ、まず第一にゴーストライターという下世話な題材を取り上げながら、リサと由樹という2人の女性の立場をさまざまに変化させながら、物書きの苦悩を深く掘り下げていき、
先の読めない展開でグイグイと引き込んでいく見事な脚本でした。
「僕」シリーズや「フリーター、家を買う。」の橋部敦子の世界観の作り方のうまさを改めて感じさせる作品だったといえます。
加えてやはり特筆すべきは作品にピーンと張り詰めた緊張感を与える主演の中谷美紀の存在感の強さ、繊細にして豊かなな感情表現の見事さでした。
中谷美紀はやはり只者ではないですね。なかなかこういう女優は今いないように思います。
浮世離れした感じが独特です。
さらに水川あさみ、田中哲司、キムラ緑子、三浦翔平、菜々緒、江波杏子、石橋凌、高杉真宙ら脇を固めるメンバーすべて良かった。世界観を壊す人が誰もいませんでした。
オープニングテーマや主題歌も緊張感をあおって良かったと思います。
今回の評価は…