ラストのオチを見て私めはつくづく思いました。
あ~このドラマはある種女性たちの再生を描いたファンタジーだったんだな…と。
誰も来ないような小さな入江の海辺でまたレストランを始めよう…って。
ふ~~ん。
あの屋上のレストランもファンタジーの舞台でしかなかったのかな…と。
フジテレビ 木曜22時
「問題のあるレストラン」最終回
主演…真木よう子
脚本…坂元裕二
演出…並木道子
お客さんが不注意で飛ばして屋上から下に落ちたスプーン。
そんな些細なことが、クレーマーによって大げさなことになっていき、閉店に追い込まれてしまう。
そのクレーマーはついに画面には現れず、その経緯もほとんど描かれない…
雨木(杉本哲太)という見える敵は倒したのに、見えない敵に倒されてしまう皮肉。これもまた現代を象徴するブラックなファンタジーとも言えます。
まるでおとぎ話のように人気店になり、まるでおとぎ話のようにはかなく消えていく…
そんな脚本家の狙いを今回感じ取りました。
私めがあまり好きではない、レストランで働きながらのダンス、今回はきゃりぱみゅも出て客も巻き込んでのものでしたが、ああいう演出もファンタジー性を高めるための演出だったと思えば、今さらながら納得がいくのです。
今回の最終回で一番良かったシーンは、雨木がいない隙に、異母弟の少年に向かい、千佳(松岡茉優)が語りかけるところ。そのセリフが心に深く残りました。
「人に優しくすると、自分に優しくなれます。
人のことが分かると、自分のことが分かります。
人の笑顔が好きになると、自分も笑顔になります。
自分は自分で作るの」
いい言葉ですね。
これは人嫌いで人と関わりたがらず笑顔もなかった千佳が、ビストロフーで得た教訓。
千佳はとてもかわいい笑顔ができるようになったのです。
新田(二階堂ふみ)と星野(菅田将睴)の2人だけでの会話のシーンも良かったですね。
新田に初めて方言丸出しでへんてこなエピソードを懸命に語る星野の姿、2人の間にできた溝が少し埋まったような、ここからまた始められそうなそんなムードを匂わせるシーンでした。
あと、シンフォニックの店内でそちらの男性たちとビストロフーの女性たちが仲むつまじく働くたま子(真木よう子)の夢は、まさにそれがたま子の理想だったんだなと思わせる印象的な映像でした。
ちょっと物足りなさもありながら、このドラマらしいとも言える最終回でした。
今回の評価は…
このドラマ、主演の真木よう子よりも、若手トリオ(松岡茉優、二階堂ふみ、高畑充希)の好演が強く印象に残る作品でした。
そして、それをふんわり包む安田顕のハイジさんとYOUの烏森さんの存在感。
ぶっきらぼうながら情に細かい東出昌大の門司や、くずっぷりの良さと反省してからの純朴さを見せた菅田将睴の星野ら若手の好演に、
こちらも徹底したヒールぶりを見せた杉本哲太の雨木や改心ぶりをさりげなく演じた吹越満の土田などベテランも手堅い助演を見せ、
キャストがそれぞれ与えられたキャラクターを的確に演じていて、破綻がありませんでした。
特に傷心から立ち直った3人娘が3人で同じ曲を聴きあう公園のシーンは今も印象に残る美しい映像でした。
あれもファンタジーといえばファンタジーだったんですね、今思えば…。