刺激的な内容をどう受け止めるか?「偽装の夫婦」第1話 | 連ドラについてじっくり語るブログ

連ドラについてじっくり語るブログ

連続ドラマでこれは面白いという作品のみをマメにチェック!

その内容紹介、批評、さらにヒット分析など、あらゆる情報を連ドラ好きの方々のために提供するブログです。

このドラマは脚本家の遊川和彦が、自分が書いたものを視聴者がどう受け止めるのかを試しているようにさえ思えます。





しかし、「○○妻」では奇をてらいすぎていた部分が、今回はきわどいとこでうまくいっている感じはしました。






今回の作品にはただの不快感だけでは終わらせない何かがしっかりあるようには思います。





日本テレビ  水曜22時
「偽装の夫婦」第1話

主演…天海祐希
脚本…遊川和彦
演出…深川栄洋





まず、このドラマが突きつけてくるのは「あなたはセクシャルマイノリティについてどう思うか?」ってこと。






昨今おネエタレントの活躍やら同性婚が認められたり、とかで、同性愛者への偏見や差別はかつてほどではなくなってきているにせよ、





ドラマの中でストレートにそれを描くことはなかなか勇気の要ることです。






そこを敢えて初回からヒロインにこのドラマはふりかざしていきます。






1つは大学の時好きになったのに逃げられ、そのトラウマで人嫌いにもなった原因の男(沢村一樹)と再会したら、彼はゲイになっていて、余命少ない母親(富司純子)を安心させたいから偽装結婚してくれと持ちかけられる…






もう1つは夫にDVを受け足を悪くしたシングルマザー(内田有紀)に娘を通じて親しくなったら、あなたが好きですと告白され、家族になって欲しい…と迫られる






どちらも自分にそんなこと起きたらどうしよう?って事態に放り込まれたヒロインが、どう彼や彼女と向き合っていくか?
それがこのドラマの1つのポイントです。





内田有紀は「最後から二番目の恋」でも小泉今日子を好きになる役だったし、沢村一樹のおネエ演技もどこかで見た気はしますが、






いずれもすんなり演じていて不快感は与えませんが、こうストレートに描かれると引いてしまう視聴者はいるでしょうね。






ただ私めはむしろ脚本家が意図しているのは、心を閉ざし表面的な笑顔しかできなくなったヒロインが、ゲイの元カレによって徐々に心を開き、かつての輝きを取り戻す…というのを描きたいのでは…と思いました。






失恋の痛手だけでなく、ヒロインのヒロは叔母(キムラ緑子)のもとで育てられ、その家の兄妹(佐藤二朗、坂井真紀)はヒロによって人生が狂ったり、いまだにコンプレックスを持っていたりして…





自分が本気を出すと人をダメにしてしまうと知って、本気を出さず地味に目立たず生きることにしたのでした。





本を置きすぎて床が抜け、修理費を借りに叔母の家を訪ねるくだりは、キムラ、坂井、佐藤の個性的な好演もあって、ヒロの孤独や心の痛みを鮮やかに浮かび上がらせました。





同じ遊川作品の「女王の教室」や「家政婦のミタ」のヒロインたちと違い、






無表情でもこのヒロというヒロインは心の声をバンバン吐き出します。





それがイチイチ全面の文字で出てくるので
、それが笑いを誘ったり、感情のありようをわかりやすく表現しています。






いささか過剰にすぎるところはなきにしもあらずでしたが、視聴者が共感できる叫びもあり、今後この心の声は視聴者の楽しみになるでしょう。





ヒロを演じる天海祐希は「女王の教室」の頃に比べると、女優としての幅が広がり、感情表現にも深みが増しているので、無表情でもその奥にあるものが垣間見え、キャリアを感じさせる演技です。






クセの強い役ほど本領を発揮する沢村一樹との丁々発止のやりとりは、息が合って作品に弾みをつけています。





初回の演出は映画監督の深川栄洋でライディングや映像の構図、撮り方に凝っている箇所が見受けられましたが、





至って抑えめの演出で、脚本のある意味えげつなさを毒消ししてくれていたようにも思います。





脚本が突出せず、キャストと演出とのバランスが保てていたのが、良かったのかもしれませんね。






これが続くといいのですが…。






今回の評価は…4