これまで何度も映画やドラマで取り上げられてきた夏目漱石の「坊っちゃん」
ドラマで私めが記憶しているのは柴俊夫、渡辺徹、郷ひろみ、本木雅弘らが演じた坊っちゃん。
そういう人たちとはちょっとタイプが違う二宮和也がどんな坊っちゃんを演じるのか興味があり、年末年始のスペシャルドラマの中では楽しみにしていた作品でした。
1月3日 フジテレビ 21時~23時24分
「坊っちゃん」
主演…二宮和也
脚本…橋部敦子
演出…鈴木雅之
いくら夏目漱石の名作とはいえ、やはり明治時代に書かれたものを平成28年にそのままドラマにしたら、なんで今これやるの?になってしまうわけで、
そこを「フリーター、家を買う。」で二宮和也と組んだことのある脚本の橋部敦子がどうアレンジするか、そこも私めの興味をそそる点でした。
…で、結論から言うと、橋部敦子うまくアレンジしたなと感心しました。
坊っちゃんをコワモテの無鉄砲というより
、ウソをつくのもつかれるのも大嫌いな、幼い頃からピュアでまっすぐな気性のままのお坊っちゃんにして、
まわりの人々がいかにその坊っちゃんに影響を受けるかに重きを置いて描いたのでした。
原作とは違って、うらなり(山本耕史)もマドンナ(松下奈緒)も生徒たちも、赤シャツ(及川光博)べったりだったはずの野だいこ(八嶋智人)までも、ぶれない坊っちゃんの影響を受けて、ラストには自分の考えに従って行動するようになるのです。
これまでの坊っちゃん役者に比べれば、小柄で華奢な二宮和也は、童顔で頼りなげで迫力不足なのですが、
曲がったことが嫌いで偏屈な青年というアプローチで平成版の坊っちゃんを作り出してみせました。
今の時代、坊っちゃんのようなことを押し通すことは難しいだけに、ある種ファンタジックにさえ見え、
「HERO」の演出でおなじみの鈴木雅之がスタイリッシュな映像で、そのへんをうまくつかんで見せていたと思います。
二宮和也という人にはそういう周りの人の才能を引き付ける求心力のようなものがあるんですね。「赤めだか」の時にも感じたことですが…。
二宮和也の好演もさることながら、周りのキャストもそれぞれ良くて、
中でも及川光博の赤シャツは歴代の赤シャツの中でもトップクラスのはまり役ではないかと思いました。
あと、堀北真希を攻め落としたことでグイグイ行く人イメージがついた山本耕史が、ウジウジと煮えきらず事なかれ主義のうらなりをそれらしく演じ、
マドンナへの告白シーンなどは、その力量の高さを遺憾なく発揮しました。
他にも仏頂面の古田新太の山嵐、ヘラヘラした八嶋智人の野だいこ、つかみどころのない岸部一徳の狸、いずれも適材適所で…
中でも坊っちゃんをよいご気性と事あるごとに誉め、癇癪をおこしてはいけないとたしなめ続ける宮本信子の清が、
このドラマの世界観を作るのに重要な役割を果たしていました。
八千草薫の声も好きですが、この宮本信子の包み込むような声も私めは好きです。
以上、懸念した割にはきちんとできていたのでホッとしました。
この作品の評価は…