「真田丸」の総評、後編は魅力的だった役者たちについて触れていきます。
主人公の真田信繁(堺雅人)は歴史の表舞台で活躍したのは大坂の陣の時だけなんですね。
なので、この作品は「青春編」「大坂編」「三成、九度山編」「大坂の陣編」と四部構成になってましたが、
信繁が主人公然としていたのは最後の「大坂の陣」だけでした。
はっきり言って、私めがこの作品を見続けたのは、一つは三谷幸喜の脚本、もう一つは草刈正雄の昌幸と小日向文世の秀吉の好演あればこそだったのてす。
秀吉と昌幸が出なくなってからは、やや見るテンションが下がったのは確かです。
まず前半を牽引したのは何と言っても草刈正雄でした。
この昌幸は良かったですね。
自分の領地を脅かす周囲の大名たちを手玉に取り、行き当たりばったりで味方になったり裏切ったりを繰り返す。
その奔放な生きざまを草刈正雄は実に魅力的に演じたと思います。
なかなか実社会ではそうはいかないのを、やってくれる昌幸に溜飲を下げたオジサンたちは多かったでしょうね。
徳川の大軍を劣勢ながらはねのけた上田合戦などは、その白眉でした。
そんな昌幸が天下統一されていき、戦乱が減るに従い、生き甲斐を失っていく姿も、
窓際になったベテラン会社員のようで、その哀愁が印象的でした。
一方、権力を手にしてからの秀吉を演じた小日向文世は、三谷幸喜が小日向文世だからこそ、こう書いたんだろうなと思える、実にはまり役でした。
家族思いな秀吉が、権力者ゆえに猜疑心が強くなり孤高な存在になっていくプロセスをデリケートに演じて、見ごたえがありましたね。
これまでさまざまな名優が大河ドラマで秀吉を演じてきましたが、一味違うユニークな秀吉でした。
草刈正雄や小日向文世の存在感が強かったので、堺雅人が脇役のように見える回もしばしばありましたね。
あと良かったのは、兄信之役の大泉洋。
こちらも大泉洋らしさをうまく打ち出した演技を随所に見せてくれて、父や弟と違う生きざまが魅力的でした。
キャスティングで面白かったのはあまり知名度のない舞台俳優を重要な役で起用したことで、
信之の最初の妻で、その後侍女になるこう役の長野里美。
昌幸の弟で、さまざまな調略をまかされる信尹役の栗原英雄。
秀吉の愛情を失い追い込まれていく秀次役の新納慎也。
茶々を支え続け発言力を増していく大蔵卿局役の峯村リエ。
この4人は特に印象に残りました。
今後、いろんなドラマでも起用されるでしょう。