なぜ、この作品をNo.1にしたかは、脚本が野木亜紀子であることが大きな理由の1つです。
私めはこのブログで、いかに連ドラにとって脚本が占める重要性が大きいかを再三書いておりますが、
野木亜紀子は今、最も充実している脚本家と言っても過言ではないでしょう。
この記事ではその野木亜紀子について、私めなりの考察をしたいと思います。
まず私めが注目したのは、彼女の経歴です。
フジテレビのヤングシナリオ大賞で大賞を受賞したのは知っていましたが、その時既に36歳だったんですね。
では、それまでどうしていたかと言うと…、
学生時代は演劇部に入ったそうですが、仲間の演技の才能に圧倒され、演じる側になることは諦めたそうです。
その後、映画監督を目指して、日本映画学校に進学。
しかし、映画界には就職せず、ドキュメンタリーの制作会社に就職し、ディレクターになります。
現場に出て取材したりしていたようですが、ディレクター業務が自分に向かないと自覚し、そこも退職。
映像関連の仕事に関わる最後の目標として脚本家を目指し始め、6年もの間、フジテレビヤングシナリオ大賞に応募し続け、ようやく36歳の時に「さよならロビンソンクルーソー」で大賞を受賞し脚本家になれたようです。
なかなかの苦労人ですし、紆余曲折を経てきてるんですね。
しかし、私めは彼女が今、大成しているのは挫折を繰り返したこの経歴が大きかったと思います。
演じること、演出することを学んだ上で、脚本を書くことに至ったところに、彼女の脚本の強みがあるように思うのです。
野木亜紀子は、ヤングシナリオ大賞を受賞して以降、フジテレビで松本潤主演の「ラッキーセブン」や菜々緒主演の「主に泣いてます」を他の脚本家と共作しますが、作品に恵まれませんでした。
才能が開花するのはTBSに活躍の場を移して新垣結衣主演「空飛ぶ広報室」を書いてから。
これは有川浩の小説が原作で、この作品や同じ有川浩原作の映画「図書館戦争」の脚本で、原作者の有川浩から原作を読み解いた上でエピソードを取捨選択する手腕を高く評価されたそうです。
続く連ドラの「掟上今日子の備忘録」はユニークな作品ではありましたが、作品的にはイマイチでした。
しかし、またTBSに戻って人気コミック原作の「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」とたて続けに傑作を書き上げます。
春クールと秋クールに傑作を1年に2本、単独脚本で書き上げたわけです。
「重版出来!」では群像劇を巧みにまとめあげ、「逃げるは恥だが役に立つ」はユニークな二人の関係を魅力的に書きつつ、周りのキャラクターもみな愛すべき人物に書き上げました。
原作ものを脚色する手腕の高さを十分に発揮した野木亜紀子は、今年冬ドラマで満を持してオリジナル作品「アンナチュラル」を書きました。
オリジナルはどうなのかという心配も軽くはね飛ばし、「アンナチュラル」はユニークな傑作になりました。
そして、この秋ドラマで、2作目のオリジナル連ドラ作品を書くわけです。
野木亜紀子の特徴は、キャラクター一人一人を愛すべき人物に磨きあげる手腕です。
今回の作品はどんな作品になるでしょうか?