世の中には白黒はっきりしない、「わからないまま」のことってあるわけで、デジタル的に何でも割りきれるものではない。
アナログ的なファジーさの中に、人生の妙味はあるように思います。
NHK 土曜21時
「天使にリクエストを~人生最後の願い~」第3話
主演…江口洋介
脚本…大森寿美男
演出…田中諭
今回は塩見三省演じる自称「爆弾犯」武村のエピソードでしたが、彼はホントに爆弾犯だったのか、爆発しなかったのは不発だったのか、ホンモノではなかったのか、そのへんは曖昧なままでした。
ただ厭世的に生きてきた武村に、自分も息子を亡くしたあとやさぐれて生きてきた島田(江口洋介)が言うセリフにはグッと来ましたね。
「あんたは、ちゃんと価値のある生き方をしてきたじゃないか。それは爆弾で吹き飛ばしていいようなものじゃない…」
くだらない人生だったのか、価値の人生だったのか、それは他人が決めるものではないですよね。
末期がんの武村が、自分の宿泊所から自分が書いた小説を運び出す…
その切なさが後からジワジワと来る話でした。
塩見三省自身が死にかけた病から復帰した人だけに、死と向き合う男の虚無な目つきが実にリアルで迫るものがありましたね。
自分なんて死んだってかまわないという気がある島田の心の闇の深さもかなりなものですが…
江口洋介が積み重ねたキャリアを感じさせる深い演技を見せています。
あと2回しかないのが残念な秀作です。
今回の評価は…