このドラマの脚本家、生方美久はこれが連ドラデビュー作にもかかわらず、スゴい才能を発揮していて、毎回うならされていますが、
今回は改めて紬(川口春奈)と想(目黒蓮)を中心にすえて、想の苦悩をあぶり出し、しかも初回から見てきた視聴者にはたまらないセリフやシーンが随所に散りばめられていて何度もハッとさせられました。
フジテレビ 木曜22時
「silent」第10話
主演…川口春奈
脚本…生方美久
演出…高野舞
もう恋人同士になったと言っていいくらい親密な紬と想ですが、距離が近づけば近くなるで、
中途失聴者の想には苦悩の色が濃くなっていきます。
キッチンで洗いものをしている紬に近づき、後ろからポニーテールをいじってからかう想。
その時は笑顔なのに、振り返った紬が手話をせずに何かを話しかけてきても、想には何て言っているのかわからない。
そのシーンにはハッとしました。
演出的にも、カメラは想目線で、紬の声は聞こえないというもので、想のツラさが共感できるようになっていました。
おそらく高校の頃もやっていたことで、紬のリアクションも同じなのでしょう。でもその声は聴こえない。昔と同じことをすることで、変わってしまった自分を痛感する皮肉。
目黒蓮の笑顔と憂い顔のギャップが今回はとりわけ際だっていましたね。
想の言葉でグサっと来たのは、紬の声を思い出せないというセリフでした。
第2話で、紬と会って下の名前で呼んでもらった想。それを大切に覚えておこうと呼んでもらったはずなのに、思い出せないって…。
ツラすぎます。
第1話の再会シーンでまだ手話が分からなかった紬に、想が手話で何を訴えたかも、今回想から紬に伝えられました。
電話もできなくなるし、一緒に音楽も聞けなくなる、そう分かっていて一緒にいるなんて辛かった、だから別れた…
紬が職場でポップを書くために曲を聞いているイヤホンを聞けないのに、耳につけてみる想の行動が痛ましかったですね。
何話だったか忘れましたが、高校で想はいつもイヤホンして曲を聞いていて、紬が呼びかけると、気づいてイヤホンを外して振り返るというシーンが確かありましたが、
今回、その種明かしで、実は想は音楽の再生を止めていて、「佐倉くん」と呼ぶ紬の声を聞いていたとわかる回想シーンが挟み込まれていました。
こういう回想の挿入の仕方も、生方美久の脚本は心憎い鮮やかさで、それが現在にフィードバックし、より悲しみを深めるんですね。
想は紬に呼びかけられるのが好きだったんですね。なのに、もうその声は聴けないし、思い出せもしない…
グッと来ました。
今回は紬と想が中心でしたが、周りの人々にもきちんと目配りされており、
紬に感謝する想の妹(桜田ひより)
想に親しみ始めた紬の弟(板垣李光人)
兄や姉をきづかう良いきょうだいですし、
LINEをうまく使って、昔のように想に呼びかけて、振り向いてもらい、無邪気に喜ぶ湊斗(鈴鹿央士)は微笑ましかったです。
最近BLドラマを見てきたせいか、この2人が付きあった方が良いのか?なんて想像してしまいました。
その湊斗が奈々(夏帆)や春尾(風間俊介)と会うシーン。湊斗が手話がわからないのをいいことに湊斗に毒を吐く奈々が、奈々らしくて良かったです。
「バ~カ」だけ分かった湊斗に笑いました。
紬と想はどうなるのでしょう。
結末も生方美久は普通の恋愛ドラマのようにはしなさそうです。
今回の評価は…8