このドラマは終末期医療の病棟を舞台に患者と医療スタッフのありようを描く見事な群像劇になっています。
普通ならあれもこれもと盛り込むと、それぞれのエピソードが中途半端になりがちですが、今回などは親子関係というのをテーマにそれぞれ描かれていて、決してバラバラな感じはしませんでした。
間もなく人生の幕切れを迎えようとしている人までが悩まされ続ける親子関係の難しさを痛感させられました。
NHK 土曜22時
「お別れホスピタル」第3話
主演…岸井ゆきの
脚本…安達奈緒子
演出…笠浦友愛
歩(岸井ゆきの)が帰途につくと、病院の前で妹の佐都子(小野花梨)が待ち構えており、通りかかった広野(松山ケンイチ)
といつもの焼き鳥屋に寄っていくことに。
そこで繰り広げられたのが、歩と佐都子の母親(麻生祐未)はどちらを愛していたか!佐都子は幼くして優秀でしたが歩は離婚した父親似で母親に疎んじられてきました。
姉妹では母親に好かれるか嫌われるかでえらい違いですからね。皮肉なことに母親に可愛がられた佐都子は引きこもりになり、歩は自立ししっかり働いています。
聞いていい話?と聞くほどに立ち入った話を聞かされた広野も母親べったりで育ったようです。
この何気なく交わされた親子の話が、今回はさまざまな人々のエピソードとリンクしていきました。
メインのように扱われたのは、植物人間のような状態のひとみ(大後寿々花)とパートで働きながら毎日のように病室に来る母親寛子(筒井真理子)とのエピソード。
明るく気丈に見えた寛子でしたが、家でひとみの誕生日を祝いたいと外出許可を
もらい、その車を自分が運転し崖から落ちて無理心中しようとして未然に阻止されます。
寛子はステージ3のがんが見つかり、行く末を悲観し、死のうとしたのです。
今回は親子関係ともう1つ、なぜ人は苦しさから逃れるため死のうとするのか?もテーマでした。
もっと良い世界をイメージしてしまうからのようですが、そんな世界が死の先にあるかなんてわからないんですよね。
この病棟は風に吹かれるろうそくの炎のようにいつ消えるかわからない命と向きあう人々がいる場所なんです。
奈津美(木野花)は子どもたちとうまくいってないらしく、相続のことでもめていたり、
母親が歌ってくれた歌を懐かしむハル(樫山文枝)は自分は良い母親じゃなかったと自戒したり、
病棟で起きる出来事を見聞きして、それぞれの親子関係があぶり出されていくのが実に巧みな脚本でした。
中でも私めが泣かされたのはアル中で肝臓をわずらい、心が荒んでいて、ムチャを言ったり暴れたりする安田(木村祐一)と、暴れた安田に暴言を吐き問題になったケアワーカーの南(長村航希)とのエピソードでした。
安田を押さえつける時に南は自分は幼い時からアル中で苦しんできた、なめんじゃねぇぞ!とドヤしつけました。
問題になり南はケアワーカーを辞めようと言い出しますが、安田は自分のようなアル中になるな、アル中から抜け出して努力してケアワーカーになったのはスゴいことだ、辞めるなんてもったいないと諭します。
南は安田の熱い言葉に、親にも褒められたことないのに、と感涙にむせびます。
アル中のために2人とも家族とはうまくいってなかったんでしょうね。
そんな2人が他人なのに家族以上に影響を与えあうさまは、感動的でした。
キム兄に泣かされるとは…
シングルマザーで息子のため頑張ってきた看護師の赤根(内田慈)もステージ3のがんが見つかりました。
最終回はその話や、病院に来なくなった
水谷(泉ピン子)のエピソード、そしてハルにも死期が迫るようです。
今回の評価は…9