飢餓海峡 (1965年公開) | Asian Film Foundation 聖なる館で逢いましょう

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韓国【韓国映画・日本公開】韓国

 

 

 

一昨日 2月23日から公開が始まりましたNEW
 

犯罪都市 NO WAY OUT

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ヨロブン、もう絶対に観に行かはるんでしょうけど、私も超・楽しみです、『犯罪都市』の3作目!!


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飢餓海峡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


飢餓海峡

解説 水上勉の同名小説を「鮫」の鈴木尚之が脚色「宮本武蔵 一条寺の決闘」の内田吐夢が監督した推理劇。撮影は「路傍の石(1963)」の仲沢半次郎。16ミリからのブローアップ、ネガ像とポジ像を密着してのポジ焼きつけ、現像途中での意識的な露光による「東映W106方式」を採用。1964年12月27日公開予定であったが制作の遅れから、翌年の1965年1月15日公開へと順延、「あの雲に歌おう」との二本立て興行となった。1964年度キネマ旬報ベスト・テン日本映画5位。 (映画.com)




 

いつも、ありがとうございます(^-^)ノ

 

17日に内田吐夢監督の『飢餓海峡』を観ました。

 

以前、ブロともさんのboo-rei 三好さんにオススメしていただき、観たいと思っていた作品です。

1965年に公開された作品ですが、私にとって日本の昔の映画を観る学びという形ですね。

とにかく頑張って観ようという。

 

まず『飢餓海峡』は水上勉先生(1919年3月8日~2004年9月8日)の作品が原作です。

 

また嘘だと思われそうですが、私も水上勉先生の作品を何作か読んでおりますが ―― それが「読んだ」と呼べるほど理解できたものだとは自分でも考えません汗

ともかく(難しい字を飛ばしつつ)最後まで一生懸命「字を追った」というのが正直なところです。

 

どの作品を読んだのかというと、『雁の寺』、『越前竹人形』、『五番町夕霧楼』、『越後つついし親不知』といったタイトルに覚えがあるのですが ―― 物語などは思い出せないんですよ汗

ただ、ぼんやりと「哀しい話」だったような記憶があるだけです。

とにかく10代のある時期、水上勉先生の本を続けて読んだ記憶があるんですね。

その時期、宮尾登美子先生の本も読みましたし、日本の哀しい小説に惹かれていたように思います。

 

余談ですが、やはり十代の時、公開中の『カラーパープル』の原作である『カラーパープル』(1982年)を泣きつつ読んでますし、そののちもアリス・ウォーカーさんの他の本も読みました。

それはアメリカの文学に集中して読んでいった頃ですね。

 

ともかく水上勉先生の『飢餓海峡』(1963年)を読んでへんことは確か。

本も、映画も知りませんでした。

 

だから何も知らずに映画を観ることになったんですが、題名『飢餓海峡』から漠然と内容を想像しました。

何か字面から「厳しさ」のようなイメージが伝わってきます。

 

なんと3時間の映画です。

 

まだ観ていない方のためにさらっとだけ、最初の方を書かしてもらいますね。

 

ただ、映画『飢餓海峡』は難しい映画ではないと思います。

私も何も知らずに観ましたが大丈夫でした。

もちろん疑問もありましたが、それは後述します。

 

飢餓海峡

それはニッポンのどこにでも見られる海峡である

その底流に我々は貧しい善意に満ちた人間の

ドロドロとした愛と憎しみの執念を見ることができる


昭和22年(1947年)9月20日、10号台風が襲う中、北海道・岩内で質店一家三人が殺害されて大金が奪われ、家には放火された。

火事は燃え広がり、全町の八割を消失する大火となった。

3人の男たちが逃げるように汽車で岩内から函館に向かっている。

 

同時に台風の海では青函連絡船が転覆し大惨事となった。

3人の男たちは海に投げ出された人たちを救助する人たちに紛れて船を奪って逃げようと計画している。

 


時間を経て ―― 3人の男たちのうちの一人、犬飼多吉(三國連太郎)はビクビクしながら汽車に乗っていましたが、自分がタバコを吸わないからとおばあさんにあげる優しさを見せる。

 

それを見ていた杉戸八重(左幸子)は自分が食べていたおにぎりをお茶目に見せびらかすんですが、結局は犬飼多吉にも一個あげて、二人は少し会話した。

 

戻る道ないぞ~、帰る道ないぞ~、って。

 

それで、犬飼は八重の後をつけて八重のいる家に行くんですが、それに気づいた八重は自分の部屋に犬飼を招き入れ、お風呂を勧める。

 

ここ、最初はえらい気軽でスムーズな逆ナンに見えて、なんでこんな会ったばかりの人を部屋に招き入れているのかと疑問に思ったんですが、つまり杉戸八重が旅館のような娼館で働く娼婦で、犬飼はその客になったわけですね(八重はお店の人から「ちづるさん」と呼ばれていました)。

料金は当時のお金で50円でした。

 

心ここにあらず落ち着かない犬飼は八重との時間を過ごし、彼女の純粋さ、そして自分に期待してくれる気持ちに心動かされたのでしょう、まとまった額の大金を「闇で儲けた金や」と新聞紙に包んで渡すのだった。

そして犬飼は行ってしまったのですが、その大金に八重は驚き、感謝の気持ちで胸がいっぱいになるのでした。

 

ここまででまだ映画の3分の1も行ってません。

 

ちなみに杉戸八重のお父さんを演じるのは加藤嘉さんで、私がこうして古い時代の日本映画を観ると必ずと言ってもいいほどご出演されている方。

いわゆる「老け役」に優れた方で、昔っから自然に老ける演技がお得意なんですよね~。

 

 

私は左幸子さん演じるこの杉戸八重がとても気に入りました。

いわば、「裏のない女性」であり、男性が好むような可愛い純粋さがある人なんですが、確かに八重は純粋なんですね。

彼女はひと晩の出会いだった犬飼からもらった大金により、人生に張りが出ていきます。

 

左幸子さん(1930年6月29日~2001年11月7日)―― もしかしたらドラマは観てるかもしれないけど(※ やはり観てないようです汗)、私はご出演された映画は1作も観ていなくって…でもお顔は思い浮かぶんです。

『快傑熟女!心配ご無用』、1997年から放送されていたこの番組を私は好きだったんだと思います。

番組の中でヒヤッとするようなやばい場面の記憶が何かあるんですね…と思ったんですが、少し調べてみたら必ずしもこの番組ではないようなので、あやふやなことは書きません。

でも、左幸子さんが話されてるのをテレビで見た記憶はあります。

 

しかし、『飢餓海峡』の杉戸八重と私が知っている左幸子さんは全然違うんですよ。

杉戸八重は悪く言えば田舎のもっさりした垢抜けない女性で、しかし映画の中の物腰から、きつい環境で働くことになってもそれに順応し、耐えていくタフさがある人だと思います。

 

その後、東京へ移動した彼女は十年を体を売って生き、大金を貯金します。

 

と、同時に映画では、もちろん岩内での一家3人殺害放火事件の捜査も行われます。

犯人を追うのは刑事・弓坂吉太郎(伴淳三郎さん)。

 

弓坂の刑事としての力量はどうだったのだろう。

映画を観ていて、この方は実直な人物でまた粘り強いんだけど、やや迂闊なところがあったように思いました。

しかし執念で事件を追い、結果として警察を辞さねばならなくなったようで、そのことで息子たち(特に長男)からの尊敬を失っています。

 

様々な証拠から推理が行われ、犯人の目星と足取りがついていくけど、弓坂刑事は犯人を追い詰めることはできませんでした。

 

その後、東京にいた杉戸八重は勤め先で、ある新聞記事を目にし、それが自らの恩人たる犬飼多吉だと気づき、お礼を言いに彼を訪ね、そのことで新たな事件が発生することになる。

 


 

東京で発生した新たな事件の捜査が始まり、高倉健さんが味村時雄刑事の役で登場します。

お若いんですが、晩年とあまりお変わりありませんね。

ただ役柄上、セリフも多いし、また激高して声を荒げる場面もありました。

でもホントかっこいいんですよね。

高倉健さんを見れて値打ちがありましたわ~。

 

 

3時間の映画ですが、ホントに面白いです。

3時間ずっと退屈なんかしませんね。

 

まず推理の面で、ハタと膝を打つような場面がいっぱいあるんですね。

だからめちゃくちゃかっこいいですよ。

 

そしても一つ、感情面というか、ドラマですよね。

後半になると、ため息が出ました。

 

そして撮影 ―― 1960年代半ばの映画ですが、何ヶ所か、特にカメラが移動している場面で、よく昔にこんなふうに撮影したなあと思いました。

特に東京に行った杉戸八重が警察の取り締まりから逃れ、軒並みに沿って移動していくのを上から撮影したカットですか。

あそこはゾクゾクきましたね。

 

 

※ ネタバレしてますのでご注意ください。

 

この映画もネタバレせずに感想を書くのは難しいので、最後にネタバレ覚悟で書かせてもらいますが、やっぱり第2の事件、訪ねてきた杉戸八重を樽見京一郎が殺害する場面の運命の苦しみですよね。

もう、そこでそうなるのかと思いました。

 

昔、逃亡中にふっと沸き起こった善意をから渡したお金が八重の心の拠り所となり、犬飼多吉が彼女の中でずっと大きな存在になっていったこと、10年を経てもその気持ちが消えなかったことで八重は樽見京一郎を訪問し、樽見は急に訪ねてきた八重に恐怖を感じた…そう考えます。

 

ああいった状況でああいう形で殺めてしまうことのリアリティには少し疑問もあります。

10年前に弓坂刑事に尋ねられた時にも「あんな警察のやつなんかにホントのこと喋れっか」と犬飼多吉のことを隠してくれた杉戸八重です。

樽見が八重に真実を話し、今の樽見京一郎があの時の犬飼多吉だと納得してくれた上で、八重は樽見の不利になることは絶対に他で明かすことはなかったでしょう。

樽見は彼女を手にかけるべきではなかった。

 

しかし、それは話の上でで、やはり昔の自分の犯罪につながるかもしれない人が急に現れたのは樽見にとって驚愕、恐怖だったのでしょうか。

物腰は落ち着いているように見えましたが。

 

しかし八重の死後、彼女の持ち物が証拠になっていきます。

その鮮やかさ、というか切れ味ですか…ゾクゾクきました。

 

八重を手にかけ、殺人を心中に見せかけるトリックをしなければ、明るみに出なかった証拠です。

しかし10年を経て、過去の証拠に意味が生じてしまうんですよね…。

 

八重が樽見京一郎が犬飼多吉だと確信する場面も凄かったですね。

 

樽見京一郎は追い詰められ、警察の署で取り調べを受けます。

不思議なことに三國連太郎さんが主演された『マルサの女2』(1988年) ―― この作品は私が観ていた決して多くはない三國連太郎さんの出演作のうちの一つなんだけど ―― がオーバーラップしました。

かなり重なってるように思います。

これは伊丹十三監督の「オマージュ」なのだろうか。

 

結論ですが、10年前の犯罪の真相はわかりません。

映画で描かれていないもの。

樽見京一郎の言い分が真実なのかもしれません。

 

ただ10年前の北海道・岩内で沼田や木島といた犬飼多吉はどこか自分がいる状況を把握できていない表情でしたし、事件について知らないようにも見えますし、また沼田や木島が犬飼に罪を着せようと企んでいても不思議ではありません。

函館から船で逃れたあとのことは、犬飼=樽見の言い分を頭ごなしに信じない理由もなさそうです。

 

樽見の最後の選択、それはやはり私は八重への懺悔だったのかなあと思います。

犬飼多吉=樽見京一郎には罪悪感があったようです。

 

八重の家族の前で降霊の儀式を行っていたイタコの顔を見ても恐れていた犬飼多吉は慎重な性格ですが、自分がやったことに苦しめられていたのかもしれない。

警察の尋問の中で明かされた八重のこれまでの実像を知る時、樽見京一郎はさらに深い罪悪感を感じたことでしょう。

 

それについては10年で大きな会社の社長さんにまで上り詰めた人物として、殺人犯だと知れ渡ることも我慢できないことだったと思うけど、人が命を絶つこと、ましてやあの場所でとなると、やはり八重への懺悔かなあと思います。

 

「樽見の生家を訪れました時に、そのあまりの悲惨さに、こういうところに育った人間は、いったいどうゆうことを考えるんだろうか。罪の意識を持たない人間が出来上がるんではないだろうか。ふと想像に襲われました。おそらく少年時代の京一郎は、自分の貧しい境遇を憎んだに違いありません。もっと人間らしい生活がしたいと思ったに違いありません。何とかして世の中に出たい、浮かび上がりたいと焦る心が、犯罪と結び付いたのではないだろうか。自分はこのように考えたのであります。以上です。」という、樽見の本籍地調査を担当した岩田刑事(八木貞男)の報告 ―― 確かに私たちは犯罪、犯罪者をそういうふうに考えてしまうものだけど、どうなのだろうか。

たとえそうであっても、樽見京一郎の心には昔の自分と同じ貧しさに苦しむ人への思いやりが失われずにあったことは間違いないでしょう。

それは実業家としての樽見京一郎の行いにも表れているのではないでしょうか。

 

ラストについては警察の思惑を越えたというか、ズバリ不手際なんですが、警察の人々の完璧であるはずの厳しい監視を上回る予想以上の出来事だったのかな。

このラストで真相を知ることはできなくなりましたが、そういった結末ゆえ、さらに考えさせられるものなんだと思います。

 

↑ ネタバレはここまでです。

 

『飢餓海峡』というこの映画も、言葉では言い表せない作品でした。ただ犯罪を憎むだけの単純さでは理解できない物語ではないでしょうか。

 

私は政治や社会について難しいことはまだわからないけど、今の日本も『飢餓海峡』のような複雑さで社会を見るべきではないかと思います。

何事も単純に軽く見るのでは、本質には迫れないでしょ。

 

もう観て、何とも言えないんですが本当に観て良かったです。

凄い映画だなあ~と思いました。

本当は原作の小説を読んでさらに理解を深めるべきなんですよね…。

 

boo-rei 三好さん、圧倒的な名作をオススメいただき、本当にありがとうございます☆⌒(*^-゜)v

 

映画ファンの方々は皆さん観ておられるでしょうけど、また観てない若い方々もチャレンジしてください。

 

今日もおおきに、ごめんやす…(^.^/)))
 

 



飢餓海峡


A Fugitive from the Past
기아해협
饥饿海峡


1964年製作/182分/日本
劇場公開日:1965年1月15日
配給:東映

監督 内田吐夢
脚色 鈴木尚之
原作 水上勉
企画 辻野公晴 吉野誠一 矢部恒
製作 大川博
撮影 仲沢半次郎
美術 森幹男
音楽 富田勲
録音 内田陽造
照明 川崎保之丞
編集 長沢嘉樹
スチール 遠藤努

三國連太郎 - 犬飼多吉 樽見京一郎
風見章子 - 妻敏子
左幸子 - 杉戸八重
加藤嘉 - 父長左衛門
伴淳三郎 - 弓坂吉太郎
進藤幸 - 妻織江
加藤忠 - 刈田治助
岡野耕作 - 戸波刑事
菅原正 - 佐藤刑事
志摩栄 - 岩内署長
外山高士 - 田島清之助
河合絃司 - 単本虎次郎
最上逸馬 - 沼田八郎
安藤三男 - 木島忠吉
曽根秀介 - 朝日館主人
牧野内とみ子 - 朝日館女中
北山達也 - 札幌の警部補
山本麟一 - 和尚
大久保正信 - 漁師辰次
矢野昭 - 下北の漁師
西村淳二 - 下北の巡査
遠藤慎子 - 巫子
田村錦人 - 大湊の巡査
沢彰謙 - 来間未吉
安城百合子 - 葛城時子
荒木玉枝 - 富貴屋のおかみ
河村久子 - 煙草屋のおかみ
亀石征一郎 - 小川
須賀良 - 鉄
八名信夫 - 町田
室田日出男 - 記者
久保一 - 池袋の警官
北峰有二 - 警視庁の係官
三井弘次 - 本島進市
沢村貞子 - 妙子
高須準之助 - 竹中誠一
藤田進 - 荻村利吉
鈴木昭夫 - 唐木刑事
関山耕司 - 堀口刑事
斎藤三男 - 嘱託医
高倉健 - 味村時雄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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