映画 アイアン・メイデン 血の伯爵夫人バートリ ネタバレざっくり・感想
エリザベート・バートリとは
エリザベート・バートリ。
血の伯爵夫人とも呼ばれる彼女は、16~17世紀のトランシルヴァニア公国で最有力な家門(11世紀のハンガリーに発祥を持つ)バートリ家に生まれる。
夫を愛しながらも多くの愛人を持っていたと言われ、自らの若さと美貌を保つことに執着し、
若い娘の血を浴びる事が若返りの何よりの秘訣であると信じ込み「鉄の処女」などと呼ばれる拷問道具を使い、
数多くの若い娘を惨殺した。
殺害した処女の数なんと650人で、ヴァンパイア伝説のモデルともなったと言われるエリザベート・バートリの生涯を描く。
映画のタイトルにある「アイアン・メイデン」とは鉄の処女という意味。
映画 アイアン・メイデン 血の伯爵夫人バートリ 概要
2010年公開のイギリス映画。
監督/脚本: ジュラジ・ジャクビスコ
撮影:ブラベック ヤン・デュリス
主演: アンナ・フリエル
ジャンル: 歴史上の人物(歴史宮廷スペクタクル?)
上映時間:140分
もし、言い伝えが正しいとするならば、エリザベート・バートリを徹底的に美化し擁護した上に、
映画 アイアン・メイデン 血の伯爵夫人バートリ ネタバレ・あらすじ
1575年、名門貴族バートリ家の令嬢、エリザベートは15歳で、5歳年上のハンガリー貴族ナーダシュディ・フェレンツ2世へ嫁ぐ。
婚家もバートリ家に負けず劣らずの名門であったが、バートリ家の方が高い身分であったので、結婚後もバートリ姓を名乗った。
夫婦仲は睦まじく、二人は、生涯で3男3女を授かった。
オスマン帝国との戦争で留守がちの夫を「私の黒騎士」と呼び、
戦場にいる夫を待ち焦がれたエリザベートであったが、
そんな日々の中、絵描きのミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオとも恋仲になる。
恋に奔放である一方で、良き母、良き領主(夫の存命中は良き領主の妻)であろうと心掛けたエリザベートであったが、
夫が戦場で命を落とした後は、夫の親友であったハンガリー副王トゥルゾー・ジェルジの卑劣な策略に嵌められて、
裁判に掛けられ事実無根の猟奇殺人犯の汚名を着せられて、自分の城の自室に幽閉されて、3年半後にその生涯を閉じた。
映画 アイアン・メイデン 血の伯爵夫人バートリ 感想
猟奇殺人鬼が、残忍な殺害に明け暮れた人生を見ようと思って、この映画を視聴した人がほとんどだろうが、
実際に視てみると、全くそのような内容ではなく、残虐なシーンもあるにはあるが、さほど生々しい描き方ではない。
彼女を正当化するために、他の罪なき人物を悪人にでっちあげてしまった“とんでも映画”という見方も出来るかもしれない。
しかしながら、歴史上の悪名高き人を擁護するようなストーリーであるならば、
その反動で周囲の人物が悪役になるという皺寄せが生じる事は必然で、歴史を扱った映画やドラマでは、よくある事とも言える。
また、ずいぶんと昔々のお話なので、
今さら作中で新たに《真の悪人はコイツだった!》とされた人物の子孫に訴えられるという問題もあまり生じにくいと思われる。
前半は、エリザベートの裕福に満ち足りて幸せな人生を、
美しい風景や、昔風によく模倣された衣装と共に楽しんで視たのだが、
後半に近づくと共に、エリザベートの気分が沈み鬱っぽくなってゆく。
誤って毒入りのワインを飲み、腕がいい薬師に命を救われたまでは良かったが、
夫の嫉妬から、愛人の絵描きカラヴァッジョが牢獄に囚われた後に姿を消してから、運命の歯車が少しずつ狂い始めた。
その後、最愛(?)の夫が亡くなった事が最大の転機となったようで、
良き母、良き領主であろうとしながらも、だんだんと心を蝕まれて行くエリザベート。
その一方で、知らない間の近しい者の裏切りによって、着々と張り巡らされて行く罠。
そして最後は、小さな虫が、蜘蛛の糸に絡め取られてゆくように追い詰められて幽閉される。
ただ自分に正直に、愛を追い求め生きた女の、悲しい末路だった。
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