極上の短編ドラマ…芸術祭大賞受賞作品「火の魚」 | 連ドラについてじっくり語るブログ

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日本人って、とかく権威ある賞に弱くて…

アカデミー賞受賞ってなれば見に行くし…

直木賞受賞ってなれば買って読んだりするわけで…





私めもベタな日本人ですので、芸術祭大賞受賞ドラマとか言われると、それは見なければならんだろう…と録画しておき…





ようやく見たわけです…





いや~(*^-')b
極上の短編小説を読むような、含蓄の深い秀作でした。





NHK 3月13日21時
「火の魚」


主演―原田芳雄
脚本―渡辺あや
演出―黒崎博





脚本の渡辺あやは映画では「ジョゼと虎と魚」や「メゾン・ド・ヒミコ」、「天然コケッコー」など名作を書いている人で、もっとテレビドラマにも書いて欲しい人です。





また演出の黒崎博は緒形拳最晩年の傑作「帽子」を演出したNHK広島の名ディレクター。





この2人が強力タッグを組んだこの作品は、原田芳雄演じる老小説家と尾野真千子演じる編集者がほとんど出ずっぱり。





老練な原田と気鋭の尾野との丁々発止の演技のつばぜり合い。
非常に短いながらも中身の濃い作品でした。





かつては人気作家で酒に女に奔放な暮らしをしていた主人公は、老境に入り瀬戸内の小島に移り住み、連載小説を書いている。





そこへいつもと違う女性編集者が原稿を取りに来ます。





島の人々とも心を通わさず偏屈に生きている小説家は、最初は拒絶しますが、





編集者に島の子供たちへの紙芝居をやらせたり、可愛がっていた金魚を殺させ魚拓を取らせたりする中で、心を許し通わせていきます…




お前なんかどうせオレの本なんて読んでないだろ…と言う小説家に、編集者が歯に衣着せずズバズバ批評していくくだりは、尾野真千子圧巻の演技でした。





「外事警察」でもそうでしたが、折り目正しく、きちっとした敬語を使いながら、本音を言っていくところに不思議な迫力のある女優さんで…





その特徴がこのドラマでも遺憾なく発揮されていました。





原稿を取りに来なくなった編集者を心配したら、実は彼女は癌が再発し入院したと知り、見舞いに行きます。





紙芝居をやらせたり、魚拓を取らせたり、ストレスを感じることをさせて悪かったと素直に詫びる小説家。




しかし、意外にも編集者は私自身孤独だと思っていたら、もっと孤独な小説家の姿を見て逆に勇気づけられた…と言うのです。





孤独な者同士の心の通いあいが、じんわりと胸を打ちました。





こんなドラマをたまには見たいものです。






この枠にしては高い9.6%という視聴率もうなずけました。
(*^-')b