タイトルの持つ意味の重さ「それでも、生きてゆく」 | 連ドラについてじっくり語るブログ

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「それでも、生きてゆく」というタイトル。
「それでも」のあとにあえて句点があるんです。





つまり、「それでも」を強めることで、そのあとの「生きてゆく」の意味の重さが、さらにずしりと重いものになる…そんなタイトルなんですね。





今回は、そんなタイトルの持つ意味の重さを、登場人物それぞれから強く感じられる回でした。





フジテレビ 木曜22時
「それでも、生きてゆく」第10話



主演…瑛太
脚本…坂元裕二
演出…宮本理江子





加害者側と被害者側がどう向き合うのか…
そこを突き詰めて描いてきたこのドラマ。





今回もそんな3つのシチュエーションが描かれ、いずれもずしりと響くものでした。





まずは草間(小野武彦)と駿輔(時任三郎)。





毎日のように草間家の入り口に立ち、頭を下げ続ける駿輔。





草間はそれを無視し続けます。駿輔はいくら自分が詫びてもどうなるものでもないとわかっている…
それでもそんな行動を取らずにいられない虚しさ…





娘のかたきをとりたいが、娘が残した孫を面倒見なければならない…
医師から延命治療拒否の同意書も渡されている草間。




どうにもやりきれない2人の父親の言葉少ないやりとりが苦く切ない…





一方、今度の事件でまた雑誌に文哉の家族の写真が載っているのを見て響子(大竹しのぶ)は、隆美(風吹ジュン)を訪ね、忌憚のない自分の考えをぶつけます。




15年前にお腹が大きなあなたを見て以来、私はあなたを憎み続けてきた…





私に嫌がらせをされてあなたも私を憎んできたでしょう?





すると隆美は…





私もあなたを憎んできました…娘が殺されたのと息子が人を殺したのと同じ苦しみなのに…なぜ私ばかり世間から白い目で見られなければならないのか…





私は身勝手な人でなしです…と。





響子はホッとします…
そして私たちは同じ乗り物に一生乗り続けて降りることはできない…
行き先は?…一緒に考えていかないと…





憎み苦しみぬいた末に響子がたどり着いた境地。それは加害者家族も被害者家族も変わらず、十字架を背負い続けるのだ…ということ。





静かなやりとりの奥に、重くのしかかる虚無感…
それは自分たちをそんな苦しみに追い込んだ文哉が、今なお罪を反省していないと知ってしまったからこそ…





それでも、響子も隆美もお互い生きていかなければならない…その決意表明なのです。あまりにも重く切ない…





そして最後に洋貴(瑛太)と双葉(満島ひかり)と文哉。




プールに沈んで自殺しようとした文哉を助けた洋貴。




「逃げるな、文哉!」
罪から逃れて自分を消そうとした文哉の心に、洋貴は語りかけます。





長いセリフの中でも特に朝日の話は心に響きました。




今朝、初めて朝日を見た…今までも同じように出ていたはずなのに…見たことがなかった…





響子と同じように苦しみぬいた末に、双葉やその家族と出会い…加害者側の苦しみも知り、





からんだ糸をほどくように理解しあってきた…





だから…憎しみをこえて文哉を心の底から信じてみたい…
一緒に朝日を見ないか…





洋貴がたどり着いた境地…それは文哉を許し一緒に生きてゆこうという…ものでした。





しかし…文哉は…





「お腹がすいたよ…ご飯まだ?」
「自首すればいいんだろ…ごめんな、洋貴…ごめんな、双葉」





目も虚ろな文哉。洋貴の言葉は何も文哉の心には響きませんでした…





その虚しさ…
サラダを口に放り込みながら洋貴は高笑いをします…




何と悲しい高笑いか…
瑛太の演技は切実を極めました…
これまでも度々、このドラマでいい演技を見せてきましたが、今回はその白眉と言えます。





出頭する文哉に後ろから飛び蹴りし獣のような叫び声を上げて殴りかかる双葉。




双葉のやりきれなさ…
洋貴同様に加害者、被害者双方の苦しみを痛いほど知った双葉だからこその怒り…





文哉はどうすれば深い闇から脱け出すことができるのか…





このドラマはどう決着をつけるのか…
いよいよ次回最終回です。




今回の評価は…8