大学病院という組織で生きていく以上、医者は医者として患者のことを考えるのと同時に、組織の中で生きていく自らの人生も考えなければならない…
その切実さを突きつけられた回でしたね。
フジテレビ 火曜22時
「37歳で医者になった僕~研修医純情物語~」第9話
主演…草なぎ剛
脚本…古家和尚
演出…白木啓一郎
外来の時に佐伯教授(松平健)が見落としたのがもとで伊達(竜雷太)という患者は結局死んでしまいました。
そのことがそれぞれの医者たちに医者としての自分を問うことになっていきます。
まず印象的だったのは佐伯から伊達を押しつけられ担当医になった新見(斎藤工)の言葉。
佐伯の誤診に気づいてたのでは?と下田(八乙女光)や紺野(草なぎ剛)に責められた時、珍しく丁寧語で口にしたのが…
「紺野先生みたいに患者のために身を削ろうとは思えないんですよ…俺は」
「俺にだって俺の人生があるんですよ…」
「俺そんなに間違ってますか?俺みたいな考え方は医者としてそんなにいけないことなんですか?」
できれば出世したい…
上の人に睨まれたくない…
そんな自分は間違ってるのか?
斎藤工がアップで内心を吐露するこのシーンは、これまで斎藤工の良さを出しきれてなかっただけに…爆発的にいい演技でした。
新見の言葉は紺野にも突き刺さるものがありましたが…
更に、佐伯教授に呼ばれたので直接問い詰めると佐伯からは、これ以上首をつっこむな…でないとすずを病院にいられなくさせるぞと言外に脅されます。
「医者も人間だからね~、君は君自身と、君の大切な人のことだけを考えた方がいい…」
ニヤリと笑う不敵さ…
相変わらず松平健の怪物的な凄みが見事です。
(但し佐伯は自分の腹部CTの結果を見てショックを受けてるカットがさりげなくありました…がんなんですかね)
また紺野は違う意味合いで沢村(水川あさみ)からも、同じことを言われます。
すずさんが望んでいた「普通」は特別な「普通」なんだから、今は自分とすずさんのことだけを考えてください…と。
伊達を救えなかった上に、死に至った真実を遺族に告げることも許されない下田…
その苦悩の言葉も印象的でした。
「なんでこんなふうになるのかな?俺ら人助けるために医者になったのに…」
下田は退職願を出し、遺族にすべてを打ち明けるようです。医者としての正義を貫こうとしたわけですね。
八乙女光の陰影を帯びた演技は「金八先生」の丸山シュウ役を思いおこさせ、やはりいいですね。
そしてもう一人、ドキリとさせたのが出世欲にまみれた本性をあからさまにした森下(田辺誠一)。
「俺は佐伯教授の後継者だから…ここまできて邪魔されたら困るんだ」
ホントにそうなのか?
今は佐伯に従うふりだけしているのか?
含みを持たせた田辺の演技がこれも秀逸でした。
いろんな人に言われたことを受けて、誤診を認めない病院側に納得いかない伊達の妻に廊下で会っても、何も言わずただ頭をさげた紺野。
すずを思えばこその忍耐。グッとくるシーンでしたね。
みんなが佐伯のために自分を曲げたり、耐えたりしているのに、学部長選の勝利を確実にしながら「勝ち負けでいったら負けているよ」と佐伯がつぶやく皮肉。
人生ってものの苦さを痛感した回でした。
このドラマのキャスト陣はホントみな良いですね。
今回もミムラ演じるすずの笑顔が明るければ明るいほど深い悲しみが伝わり、切なくなりました。
死んじゃうんですかね~
すず。
今回の評価は…