初回が始まって早い段階で登場する「鳥の唐揚げにレモンをかける」論争のシーン。
そのストーリーとは関係のない細かいことを長々とやりとりするだけのシーンを、聞いていられるか、いられないか、ここで視聴者はまずふるいにかけられたんではないでしょうか?
面倒くさいな~聞いていられないよ~とムッとした方は、このドラマを見続けない方が良いでしょう。
このドラマはその面倒くささを楽しむドラマなのですから。
TBS 火曜22時
「カルテット」 第1話
主演…松たか子
脚本…坂元裕二
演出…土井裕泰
ながら見はもちろん、気楽にボ~っと見ることも、このドラマは視聴者に許してはくれないんです。
セリフ一つ一つに用心深く耳をすまさなければいけないし、演じる俳優のちょっとしたしぐさや表情も注意深く見ていなければなりません。
そうすることで、深い意味の込められたセリフの重みが分かってくるし、登場人物一人ひとりの裏に秘めた部分を想像するという楽しみも増すわけです。
…というわけで、難解なドラマだと簡単に片付けられてしまう可能性は十分にあるドラマです。
しかし、じっくりドラマを見るのが好きな人にはたまらない魅力の作品ではあります。
では、肝心の中身についてですが、偶然カラオケボックスで出会った4人が、それぞれ弦楽四重奏の演奏者で軽井沢で共に暮らし、演奏をすることになる…って話なんですが。
そんな偶然があるわけがなく、どうやらそれぞれにヒロインの真紀(松たか子)に近づく目論見があってのことのようなのです。
今回分かったのは、すずめ(満島ひかり)は真紀の姑(もたいまさこ)に頼まれ、失踪した真紀の夫が「殺されてるのでは疑惑」に迫らなければならない…ということ。
このドラマで松たか子は抑えた中にミステリアスさを感じさせる、実に繊細な演技をしていて、ホントに殺してるかも?って思わせる静かな不気味さがあるんです。
やはり、松たか子って只者ではない女優だと、このドラマをよ~く見るとご理解いただけると思います。
満島ひかりはいつも通りと言えばいつも通り。猫の目のようにコロコロと感情や行動に変化があるのが、松たか子とは好対照になっています。
裸足で演奏する感じがいかにも彼女らしいですね。
らしい、といえば美容院のアシスタントを普段やっている家森を演じる高橋一生も、彼らしさが
セリフの端々、行動の端々に見えて、オリジナル作品ならではのあて書きの妙味があります。
同じ坂元裕二脚本の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」では出番が少なく物足りませんでしたが、今回はたっぷり高橋一生らしいデリケートな演技がたっぷり見られそうです。
そして、もう一人、演技パターンとしては映画「舟を編む」での演技に近い、世界的指揮者の孫である別府役の松田龍平。
ポーカーフェイスで温和そうな別府が何を秘めているのか?今はあまりにわからず、そのミステリアスがこちらも魅力的です。
4人以外では、彼らが演奏することになる店のウエイトレス役の吉岡里帆が、嘘くさい笑顔の元地下アイドルを演じていて、キラッと光る存在感を示しました。ちょっと注目です。
音楽家としては挫折してしまった4人の複雑な感情からくる、セリフのやりとりは、いろいろ考えさせられスリリングです。
見ていて心がザワザワするドラマになりそうです。
あと、エンディングの曲も映像も素晴らしいです。
一見の価値あり!これが一番のおススメかもしれません。
今回の評価は…