近ごろの連ドラは最終回よりその1つ前の回の方が良いという作品が増えているように思います。
このドラマも…。
TBS 火曜22時
「カルテット」第9話(3/14)
主演…松たか子
脚本…坂元裕二
演出…坪井敏雄
前回のラストで真紀の本名は早乙女真紀ではない…だったら何者?というミステリアスな終わり方をしたのですが、
第9話は、では真紀にはどんな過去があるのかが前半で語られ、
後半は警察に任意同行されることになった真紀と、残り3人のメンバーの別れがじっくりと描かれました。
今回の脚本で優れているのは真紀の過去を語る時に安易にそれを映像にせず、語り主体でひもといたところです。
そうすることで真紀の悲惨な過去へのイマジネーションがふくらみ、その痛みがひしひしと伝わる効果がありました。
養父の虐待。家出をしても連れ戻される日々。母親を自転車でひいた少年の家からの賠償金目当てで養父は真紀(本名は山本彰子)を離さない…
加害者家族は賠償金に苦しみ離散もしたらしい。そんなしがらみから解き放たれたくて、
真紀は戸籍を買い別人になり故郷を離れたのでした。養父は病死しており、警察はその死に疑惑を抱き捜査し、真紀を探し回っていたのです。
留置所でその真紀の過去を知り、真紀は普通の人間になりたかったんだ、それなのに自分は離婚してしまい…と、幹生(宮藤官九郎)は悔やんで泣きます。
本人の口から語らせるのではない今回の手法がいかに優れているか、それはこの幹生の涙によくあらわれています。
人と人とが分かりあうことがいかに難しいか、それを痛烈につきつけてきました。
刑事(大倉孝二)は4人が住む別荘にも現れ、真紀は任意同行されることに…。
カルテットの3人の前で、真紀は自分は早乙女真紀ではないこと、戸籍を買い嘘の名前で結婚もし、みんなも騙していたと明かします。
そして、なぜそんなことになったかを語ろうとすると、すずめ(満島ひかり)がそれをさえぎります。
そんなこと言わなくてもいい。私たちは真紀さんを信じているから…、真紀さんが自分たちを好きでいてくれていることも分かっているから…と。
そして、このセリフにつながります。
「好きになった時、人って過去から前に進む。私は真紀さんが好き。今信じて欲しいか、信じて欲しくないか、それだけ言って。」
泣きながら真紀は言います。
「信じて欲しい…」
このくだりの松たか子と満島ひかりはスゴかったですね。
まさに脱帽でした。
二人が楽しそうに買い物をしていたシーンが、ボディブローのように、ズシンとくるんですね。
演技もそうだし、脚本の伏線の妙です。
4人で別府おすすめのつまらない映画を見て、食卓を囲んで、ノクターンで演奏をする。
淡々とした流れの中で、この時間を失う切なさが胸に迫りました。
刑事と乗った車の中で、真紀がラジオを消してもらうのも、しみじみと真紀の気持ちが伝わる名シーンでしたね。
あと、これは書いておかなければならないのが、有朱(吉岡里帆)の暴挙と最後まで厚かましい退場っぷりでした。
一人一人への挨拶とか、ホントこういう面の皮の厚いヤツいるよな~という凄みがありました。
第9話の評価は…
他の回と差別化のためあえてにしました。