今年もまた豪雨被害にあった広島に、エールを送るという意味て、図らずもこのドラマは有意義な作品になったと思います。
TBS 日曜21時
「この世界の片隅に」最終回
主演…松本穂香
脚本…岡田惠和
演出…土井裕泰
北條の家では不発弾の爆発で、径子(尾野真千子)の娘の晴美が亡くなり、すず(松本穂香)は右手を失うという悲劇がありましたが、
すずの実家の浦野家では母のキセノ(仙道敦子)は原爆の日に街に出かけたきり行方知れず。
父の十郎(ドロンズ石本)と妹のすみ(久保田紗友)が探しに行ったために二次被爆し、
十郎は間もなく亡くなり、すみは具合が悪くなり、無事だった祖母のイト(宮本信子)のもとで臥せったまま…という悲劇が今回描かれました。
つつましく、タイトルにあるように世界の片隅で平穏に暮らしていた一家を、かくも痛ましく変えてしまった原爆への声高ではないアンチテーゼ。
訪ねてきたすずにすみが、腕に出た内出血の斑点を見せるシーンには胸が締め付けられました。
このままただ死を待つすみの行く末を思うと、何ともやりきれないものがありました。
すずを迎えにきた周作(松坂桃李)を羨ましげに見送るすみの表情が印象的でしたね。
すずの帰りしなに、祖母のイトが生き残ったからには、生きていい海苔を作っていくと力強く語った言葉に、広島の人々のバイタリティーを感じました。
今回知ったんですが、このドラマのチーフ演出の土井ディレクターは広島市出身なんですね。
特別な思いいれをそこに感じました。
悲しいことばかりではなく、戦地から無事に帰還した志野(土村芳)の夫の春夫(毎熊克哉…いい面構えをしていて今後要注目です)が、
これからは世界に誇れる自動車を作っていく…と勇んで出勤していく姿も心に残りました。
そして、原爆で母を失った節子をすずと周作夫婦が呉に連れ帰り、径子が晴美の服を着せるというのも、心なごむものがあり、
てっきり原爆で死んだと思っていた径子の息子の久夫も生きていたのにはホッとしました。
このドラマ、現代パートの存在意義は最終回まで疑問でしたが、戦時中につつましく生きる人々のありようを淡々とリアルに描き、キャストの好演もあって、しみじみとした秀作でした。
主演の松本穂香も抜擢にこたえて、よく頑張りましたね。
今後の活躍に期待します。
今回の評価は…