「逃げ恥」「アンナチュラル」の野木亜紀子。
「透明なゆりかご」「きのう何食べた?」の安達奈緒子。
「JIN-仁」「義母と娘のブルース」の森下佳子。
そして、この人、橋部敦子です。
橋部敦子で1本選ぶなら、どうしてもこの作品になります。
2003年 冬ドラマ
フジテレビ 火曜22時
「僕の生きる道」
主演…草なぎ剛
共演…矢田亜希子、大杉漣、小日向文世、綾瀬はるか、市原隼人、谷原章介
脚本…橋部敦子
演出…星護、佐藤祐市、三宅喜重
主題歌…SMAP「世界に一つだけの花」
このドラマが高い評価と視聴率を得たために、同じ草なぎ剛主演で、その後、橋部敦子は「僕と彼女と彼女の生きる道」「僕の歩く道」と書き「僕」シリーズ3部作と呼ばれました。
いずれも秀作でしたが、やはり最初のこの作品が印象に強く残っています。
主演の草なぎ剛は「いいひと。」で連ドラ初主演して以降、「成田離婚」「じんべえ」「TEAM」と主演を重ねていましたが、
私めが草なぎ剛という人の役者としての凄みを知らされたのは、この作品でした。
それは優れた脚本、演出が草なぎ剛の新たな境地を開かせたとも言えます。
チーフ演出の星護は、「いいひと。」の演出でもあり、草なぎ剛の良さを見事に引き出しました。
主人公の秀雄は私立の進学校の教師。冷めた性格でこれまでことなかれ主義で生きてきた男。
そんな秀雄が健康診断でスキルス性胃がんが見つかり、余命1年と宣告されます。
自暴自棄になる秀雄が、悔いなく残りの時間を生きると考えを改めて、生きた証しのビデオ日記を残したり、合唱部を設立したりしていく…という話でした。
黒澤明の名作「生きる」へのオマージュとも言える作品でしたが、映像にこだわりの強い星護は、画面を青白く冷たい色調にして、秀雄の置かれた状況を淡々と描きました。
決してお涙ちょうだいにしない、そのクールな脚本、演出がかえって深い感動を見る者にもたらしました。
特に秀雄の考えを変えていく小日向文世演じる主治医との診察シーンは、特に印象に残っています。
橋部敦子は同じコンセプトでのちに、三浦春馬主演で「僕がいた時間」を書いています。
そちらでも青年が亡くなるまでの変化を見事に描いていました。
しかし、ま~野暮を承知で書きますが、草なぎ剛の連ドラは「銭の戦争」を最後にもう5年もないわけで、いつかまた見られる日が来れば良いなと思います。