私めも中年男でありますので、外見ばかり気にして自分らしさを見失っていた男の話「男子珈琲」も、自分らしく精一杯生きてきた男の話「金魚珈琲」も心に刺さる話でした。
テレビ東京 月曜23時06分
「珈琲いかがでしょう」第3回
主演…中村倫也
脚本、演出…荻上直子
まず「男子珈琲」の方は以前「ヨンさま」に似ていると言われてから自分は「イケてる」と信じ続けてきた飯田(戸次重幸)
筋肉体操で体を鍛え、きつめの香水で加齢臭を消し、いまだにストールをヨン様巻きして出勤している飯田は、
青山のコーヒーをOLたちにおごったのに、会社のトイレでボロクソに悪口を言われているのを聞いてしまいショック。
おまけに鈍くさいとバカにしていた同僚の森(小手伸也)が自分より先に出世コースの海外赴任になると知り、更にショックを受けます。
前に来た時はイケイケでコーヒーの蘊蓄を語っていた飯田は、服装も地味になり落ち込んで青山のコーヒーを飲みに来ます。
ここで、青山はいろんな豆を混ぜて挽くブレンドとキリマンジャロやブルーマウンテンのようなストレートのコーヒーにたとえ、
「それぞれがそれぞれに自分らしさを持っているから愛されるんだと思います」
ブレンドに使われる豆にも、ストレートで飲める豆にもそれぞれの良さがある…
自分らしさを見失っていた飯田は、年の離れた妻(筧美和子)から加齢臭がたまらないと誉められるのでした。
中年男にとっては戒めのような話でしたね。
こういう役は戸次重幸にはピッタリですね。
小手伸也もナチュラルで良かったです。
続いて「金魚珈琲」は滝藤賢一演じる田舎のスナックのママ、アケミのエピソードでした。
前回の「だめになった珈琲」ではエスプレッソマシンが、エピソードの主人公を象徴する仕組みになってましたが、
今回はスナックのカウンターにある金魚鉢の中の金魚がアケミを象徴していました。
こういう比喩的な描写がこのドラマは実に巧みです。
オスかメスかも分からない金魚は、大きい水槽では生きにくくて、金魚鉢の中だから落ち着いて生きていける…
それは田舎の小さなスナックで、心優しき常連たちに慕われ生きているアケミのようでもありました。
だから、かつての同級生、遠藤(丸山智己)にこんな狭いところでなく、もっと広いところへ出て行けと言われても大きなお世話と憤慨するんです。
都会で働いていたこともあるらしいアケミは、イヤな思いをして故郷に戻ってきたのでしょう。
女装のアケミには肩身が狭いのは、老いた母と一緒に歩いていたら、知りあいが向こうから来たから離れて歩いてと頼まれるたった1シーンで痛いほど伝わりました。
決して満足しているわけではないけど、それなりの幸せを感じ、自分らしさを貫き生きているアケミの生きざまはまさにほろ苦いコーヒー焼酎のようでした。
芸達者の滝藤がそんなアケミをすんなりと演じていました。
場末な感じが何ともいえませんでしたね。
今回もマルチ商法でアケミを勧誘する遠藤を撃退する時に青山は殺気だった凄みをちらつかせました。
中村倫也の一瞬の変わりようがスゴいですね。
アケミは以前にも青山に救われていたようで、その時は青山は金髪でした。
過去に何をしてしまったんでしょうね。
今回の評価は…