脚本家の坂元裕二はこのドラマで意味深なタイトルをつけたものだと、つくづく思います。
「初恋の悪魔」
なかなか限定できなかった初恋をする悪魔とは誰のことだったのでしょうか。
最終回でその答えが分かったような気がします。
日本テレビ 土曜22時
「初恋の悪魔」最終回
主演…林遣都、仲野太賀
脚本…坂元裕二
演出…水田伸生
摘木(松岡茉優)や小鳥(柄本佑)、森園(安田顕)をもう殺してるかもしれない弓弦(菅生新樹)を引きずり出し、
馬乗りになった鹿浜(林遣都)は鬼の形相で、こんな言葉を吐きます。
「悪魔(弓弦)を殺せるのは悪魔(自分)だけだ」
鹿浜は自らを悪魔と称したんです。
このセリフで私めはなるほど!と腑に落ちました。
そうなんですね。
このドラマはシリアルキラーに憧れさえいだき、犯罪マニアで人ともうまくコミュニケーションを取れず、恋愛なんてとんでもなかった鹿浜が、
馬淵(仲野太賀)や小鳥、摘木という仲間ができ、摘木の別人格の星砂に恋をし、人間として成長する話だったんですね。
それが分かった上で、消えてしまう方の人格だった星砂との別れのシーンを見ると実に切ないものがありました。
去っていく星砂の背中に鹿浜は言います。
「ありがとう、ありがとう。僕はもう大丈夫です」
泣けましたね。
二重人格者のそれぞれに恋するという特殊な設定が、このドラマの終盤では見事にドラマに深みを与えていましたね。
松岡茉優の演じ分けの巧みさを評価するなら林遣都、仲野太賀とトリプル主演でも良かったかもしれません。
「個人差あります」のように。
連続殺人の真相は明らかになりましたが、弓弦役の菅生新樹のサイコパスっぷりは今回も凄みがありましたね。
平気な顔をして鹿浜や馬淵にウソをつくのが何とも不気味でした。
息子を父親の雪松(伊藤英明)がかばい続けたがために、怪物を生み出してしまった皮肉。
雪松もちょっとサイコパスの要素があったんじゃないですかね。
今回は良いセリフが沢山ありましたが、鹿浜が星砂に言うこのセリフは、坂元裕二からのメッセージのようにも受け取れました。
「人にできることって、耳かき一杯くらいのことかもしれないけど、いつか、いつかね、暴力や悲しみが消えたとき、そこには僕の耳かき一杯も含まれてるかもしれないです。大事なのは、世の中は良くなってるって信じることだって…」
心にしみるセリフでした。
このドラマ、いろんな要素が盛り込まれ、どうなることかと案じた時もありましたが、良いドラマになりました。
今回の評価は…8