まさか、奈々(夏帆)でも泣かされるとは…
このドラマはどれだけ主人公以外の人物を丁寧に、丁寧に描くのかと舌を巻きました。
ここまでする恋愛ドラマがかつてあったでしょうか?恋愛ドラマ史上、特筆すべき作品になりそうです。
フジテレビ 木曜22時
「silent」第6話
主演…川口春奈
脚本…生方美久
演出…高野舞
これまで詳しく触れられてこなかった想(目黒蓮)とろう者仲間の奈々(夏帆)との関係性が、過去にさかのぼって今回は丁寧に描かれました。
まず重要なのは奈々は生まれつきのろう者で、想は高校卒業後、だんだんに聴こえなくなった後天的なろう者であるという埋めきれない二人の違い。
まず、大学生活で高校の友だちとは連絡を絶ち、聴こえなくなっていくことで聴者たちと距離を置くようになる想の孤独が描かれました。
そんな中、出会ったのが奈々で、想のやるせない思いを静かに聞いてくれました。声を文字にするアプリを通して。
しかし、聴力がだいぶ衰えた想に、奈々がろう者仲間を紹介しようとすると、想は拒みました。
ろう者になることを卑下し、悲しいことととらえている想に、奈々は音のない世界は悲しい世界じゃないと伝えます。
悲しいこともあれば嬉しいこともある、それは聴者もろう者も同じだと…。
ろう者になることを受け入れ始めた想は、奈々から手話を学び、会話可能なところまでになります。
奈々は想が同じろう者になってくれたことを喜び、想を恋人のようにも思い始めていました。
しかし、そんな2人の前に、想が聴者だった時の恋人、紬(川口春奈)が現れ、奈々の心中は穏やかではなくなります。
今回、グサっと来たセリフは多々ありましたが、紬が想から手話を教えてもらっていると知り奈々が手話で一方的にまくしたてた言葉はヒリヒリしました。
「プレゼントを使い回された気持ち」
「好きな人にあげたプレゼント、包み直して渡された気分」
そう、手話を想に教えたことが奈々にとってどんなに大切な思い出であったことか…
想の声を知っている紬がうらやましくてならない奈々。
そして何より切なかったのは、奈々が夢見ていたのは、手話をするから持てないハンドバッグを片手に持ち、
もう片方の手で携帯を持ち、待ち合わせでやはり携帯で話している相手の想に、ここにいるよと手を振る…
そして手をつなぎにこやかに話す…
それは奈々にはかなわない夢。
現実で聴こえるわけのないスマホを耳にあてる奈々が、つらくて痛ましくて…。
想のような人は中途失聴者と言うようですが、それがもたらす辛さは、想本人ばかりか、周りの人々も苦しめ悲しませるというのが、繰り返しこのドラマでは描かれます。
想の実家で、もう聴けないからと想の部屋にあるCDを母親(篠原涼子)は捨てようとしますが、
父親(利重剛)と妹(桜田ひより)は密かに部屋から移動させるシーンも、グッと来るものがありました。
今回の評価は…8