#アラヴィンダとヴィーラ JAIHOで観賞。これを見る前に界隈でオススメの #インド残酷物語 を読んでおいて本当に良かった。映画を見る際の解像度が読むと読まないでは全然違ったはず。現代が舞台のインド映画を見るための必読書というのはホントだわ。
 

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この映画に限らず、インド映画は「ファクション」が如何なる物か心得てないとお口ぽかんで始まってそのまま終わる可能性が高いです。「なんでいきなりそんな大勢で殺し合いを始めるの?!」と。まあ簡単にいえば縄張り争いなんですけど。 

 

ただその「縄張り」が様々なんですよね。土地であるとか商売上の区分けであるとか選挙区であるとか。そこに利権も絡むし、インドの場合は出自の問題もあるので細かい事は多分日本人にはよく分からないのです。まあ要するに、縄張りを巡って血で血を洗う抗争を一族あげて延々続ける人達がいるんですよ 

 

日本と違うのは、それを堂々とやってる地域には司直の手が及ばないって事ですね。インド、法治国家だと思ってましたが、広すぎて、かつ歴史も長すぎて、法の手の届かない地方も多いらしい。地域によっては警察の買収も当たり前。という訳で周囲が納得する事情があれば殺人は問題にされないらしいです。

 

で、「ファクション映画」では対立する家同士の抗争における殺人を咎めに来る人はまずいないのですね。身内の誰かが殺されれば仇討ちし、その仇をまたとって、の繰り返し。その辺は日本のヤクザ映画と同じなんですが、インドの場合は血縁関係で結ばれているので仇への憎しみがより強いのです。 

 

#アラヴィンダとヴィーラ はそういう憎しみの連鎖をなんとか断ち切ろうという努力の話です。だってあまりに生産性がないもんね。そのためには「対話」が必要だと言う話をヒロインがするのが大変素晴らしいと思います。そう、これもある意味女性をエンパワメントする作品なんですよ。
 
とはいえ敵のボスを「対話」のテーブルにつかせるまでに相手の子分を切って切って切りまくるのが主人公なんですが。ここで話し合うのは男同士なので、どっちが強いかを充分見せつけた上で、「こちらが矛を収めるから話を聞け」としないと始まらないんですよ。残念ながら、人類ってそうできてるのよ。 
 
でもね、この主人公がタラクアンナなんですよ。無敵だけど留学帰りで世界を知ってて頭もいい。だから田舎でつばぜり合いを繰り返していても先がないことが分かっている。その解決策として思いがけない事をするんですが、これが快哉を叫びたくなる決断でね♪ アンナさすがだわと思っちゃいました♪ 
 

 

 

#アラヴィンダとヴィーラ のタラクさんはビームの温かみを外見には全く現さず、ただ目の奥にのみ秘めて表現しているようです。引き絞った身体もそうですが、体毛も全部剃ってギラギラした刃のような雰囲気を身に帯びてます。これRRRの前の出演作だそうで、よくぞここまで違う役をと感激しちゃいました。
 
怒りの表現も違うんですよね。ビームの場合は憤怒(ふんぬ)で、形相も恐ろしく群がる英兵を退治するって感じでしたが、ヴィーラ役の時は瞋恚(しんい)なんですよねえ。とめどなく湧き上がる個人的な怨恨を多少なりとも軽減させようと殺戮の限りを尽くしたものの、かなわなかった…みたいな苦悩さえ感じます。
 
そういう意味ではヴィーラもビームと同じく「火山」みたいなものですか。ただビームはその熱さが表面にも自然と出てくるのに、ヴィーラでは奥に奥に押し込められ、圧力のせいでより燃え盛っているのに、それを覆うための氷の鎧が絶対零度って感じかな? そのアンビバレンツが魅力なんですけど♪
 

 

 

インディの前にインド映画を見てまして、これが滅茶苦茶面白かったのですよ。ヴィジャイタラパティの映画見るのは『マスター』に続いてこれが二本目だけど、一本通った芯のある人なんだとよく分かる。マイノリティに光りをあててくれるんだ。ビギルではそれが女性達でした

 

さっき『インディ』の時にヒロインの話をしなかったのは、先に『ビギル』見てるとヘレナのキャラクターが底が浅すぎて同じ女と思えなかったからですよ。あのキャラが女である理由は、男を惑わす肉体を持ってるという以外になかったからね。まあ『インディ』の女性キャラはいつもそんな感じだけど。 

 

#ビギル に出てきた二人の女性は短いエピソードの中に女性だからこその不幸が凝縮されていて、胸が抉られてしまった。特に18才でストーカーに殺された女性のニュースが出たばかりだったから、身につまされて。日本ではその被害者に責めを負わすような発言する男も多くて。タラパティを見習えってんだ
 
#ビギル であれっと思ったのは、字幕に「ヤクザ」という言葉が使われていたこと。マフィアじゃなくてヤクザなんだ? と思って見てたんですが、うん、確かにこれは「ヤクザ」だわ。といっても半世紀ぐらい前の任侠映画のそれだけど。いや親分、かっこええわ~。めっちゃ昔見た感じだけど、痺れるわ~
 
これが白髪だけどタラパティの二役で、年配の演技はしてるものの身体そのものは若いからかっこいいのなんの! ルンギが着流しに見えてくる程、昔のヤクザ映画のかっこいい親分さん(大抵映画半ばで凶刃に倒れ、主人公が復讐を誓うタイプ)そのもの。ドスじゃなくてナタとかカマとか使うのがインド式 
 
で、そんなヤクザ映画がどうやったら女子サッカーで女性をエンパワメントする映画になるのかと思うでしょ。それができちゃうんだわ。見事なフュージョンで、とにかくこの脚本はスゴイと思った。監督も一緒にこなすアトリ氏は才人ですな。見てる間はヤクザ映画なのに見終わると女性が勇気づけられてる
 
そしてタラパティは、す・て・き♪ この方、全身バネですねえ。動きのひとつひとつがいつも弾んでるような気がする。若い役の時でも年齢の違いがあって、学生で未来が輝いている時と、数年後に夢を失って日々ちゃらけて過ごす時の演技がまた違うのよ。『フラッシュ』のエズラにも全然負けてないよ
 
#リバー流れないでよ 映画通の方々が激賞してるので見に言ったら、最高におかしかった! 観賞中つい吹き出しちゃう人続出!! すっごい日本的な世界観の中で繰り広げられる、難しくない(←ココ重要)タイムループもの。美形も筋肉も髭もなかったけど、いや~、笑った
 
『カメラを止めるな』『アルプススタンドのはしの方』に続く日本映画の快挙だと思う。どれも本当に「日本人」の姿を写しとっていて、そこから巻き起こる笑いを観客に伝染させるチカラを持っていると思うのね。あれよ「あ~、あるある」「うん、分かる分かる」と言ったあとプッ と吹き出すヤツ。
 
そこで暗黒面もちょっと出しつつ、でも決して深くは踏み込まず、ちょうどいい毒加減で観客を一旦落としておいて、次にちゃんと持ち上げてそこからぐーっとクライマックスまで一気に行くのが上手いな~、と。これ、いろんなしがらみのない、低予算映画だからこそできるんですよね、きっと。
 
#リバー流れないでよ きっとヒットしていずれ地方でも見られるようになると思いますので、お忘れなく。濃い髭とマッスル美形の合間に目を休めるのにも最適です。時間もインド映画の半分ぐらいだし。ただし笑いすぎて疲れてハシゴ映画の次で眠くなるかもしれません(←次に見たインディの前半で寝た)