映画 ネタバレ・あらすじ・結末 最終回まで~ドラマもね -32ページ目

映画 ネタバレ・あらすじ・結末 最終回まで~ドラマもね

映画のネタバレ・あらすじ・キャストを最終回までや日本、韓国、中国、米国の映画・ドラマから面白いものを選んでネタバレ・あらすじ・感想を書いています。 

洋画のご紹介です。

映画 イベント・ホライゾン ネタバレ・あらすじ・感想


映画 イベント・ホライゾン 概要


1997年公開のアメリカ映画。
監督: ポール・W・S・アンダーソン
原作: フィリップ・アイズナー
ジャンル:SF風ホラー


映画 イベント・ホライゾン ネタバレ・あらすじ


西暦2047年。
ミラー船長が率いる救助艇ルイス&クラーク号が海王星へと向かう。
出航して間もなく、船内で顔合わせした同行のウィリアム・ウェアー博士は、クルーらに、その航海の目的を明かした。
7年前に忽然と消息を絶った宇宙船イベント・ホライゾン号の探査と乗組員の救助が目的との話。
だが、この任務は極めて危険で二次災害となる恐れも大きい。
設計者、ウェアー博士の理論によると、イベント・ホライゾン号は、超光速で空間を移動する重力駆動装置「コア」が搭載された人類初の深宇宙探査船なのだと言う。
ところが、極秘のうちに出発した処女航海で消息を絶ち、それから7年が過ぎた今、突如として海王星近傍に現れたと言うのだ。

どことなく胡散臭いウェアー博士は、宇宙飛行士としての訓練も受けていないし「お荷物にならなければ良いが…」と、ミラー船長は嫌な予感に渋い顔をする。

消息を絶った後の通信を地球本部でキャッチしていたので、
今回それを、ルイス&クラーク号のクルーら全員で聴いてみようという事になる。
ノイズが多く聴き取りにくいが「ラテン語で『助けてくれ』という音声が含まれているようだ。」と、クルーの一人であるD.J(医師)

何があったのかは、さっぱりわからないが、とにかく、イベント・ホライゾン号の在る海王星近辺に到着したミラー船長らは、イベント・ホライゾン号に乗り移り調査を始めた。
すると、いきなり船内で乗組員たちの怪奇な死体を見つける。
若いクルー、ジャスティンは起動したコアが作り出した奇妙な異次元空間に吸い込まれそうになり、どうにか引き戻されるが、目を見開いたままで意識を失っていた。
やっと目覚めると、とたんに、自殺を図るジャスティン。
どうも精神の均衡を欠いてしまったようなのだ。

コアの起動により、ルイス&クラーク号は破損してしまい、止むおえず、クルー全員がイベント・ホライゾン号に移らざるを得なくなった。
イベント・ホライゾン号の船内を調査する一方で、クーパーがルイス&クラーク号の修理を行う。
酸素の残量が刻刻と減ってゆく中で、クルーらは、イベント・ホライゾン号船内の至る場所で、我が子や知人の幻覚を見始める。

やがて、動画による航海日誌を発見するが…そこには、イベント・ホライゾン号のクルーらが狂って互いに殺し合う地獄のような光景があった。
船が悪意を持ち、それらの現象を引き起こしているのではないかという仮説を、女性クルーのスタークがミラー船長に告げる。

確かに、スタークの仮説通り、イベント・ホライゾン号のコアが意思を持っているのは間違いないようで、
救助する予定だったこの船のクルーの生存者もいな事から、
ミラーはイベント・ホライゾン号を爆破して、修理後のルイス&クラーク号で地球に全員無事で戻ろうとの判断を下す。
ところが、コアの悪意に憑依されたらしきウェアー博士は、自らの両目をくりぬき、ルイス&クラーク号のクルーらに次々に危害を加え始める。
その挙句、やっとの思いでクーパーが修理を終えたルイス&クラーク号に爆弾を仕掛けて破壊してしまう。
そして2人のクルーを殺害後、
異次元に行こうと、コアを再び始動させてしまう。
ウェアー博士は、コアが宇宙の外側の異次元から戻った時、邪悪な意思を持つたのだと悟り、それを良しとし、自らもコアの悪意の化身となった。

ミラーは自分を犠牲にしてイベント・ホライゾン号の中央部を爆破する事により、船を前後二つに分断しようと試みる。
爆破のカウントダウンが刻まれる中で、一度は、宇宙空間に放り出された筈のウェアー博士がまた船内に戻っていて、ミラーの前に立ちはだかる(なんでやねん!?)
爆破が成功し、中央部は木端微塵で、ミラーは死んだと思われる。
後部は異次元空間に入り、ウェアー博士はミラーを道ずれにしようとしていたのだが失敗し、己だけで吸い込まれて行った。
前部はクーパー、スターク、ジャスティンを乗せて脱出に成功。
72日後、冬眠状態の三人は救出される。
だが、目覚めたスタークは、幻覚により、救助隊員の顔がウェアーに見えて度肝を抜かれ絶叫するのであった。

映画 イベント・ホライゾン 感想


上映された当初は「駄作」との声も上がっていた作品らしいです。
でも、時が経ち「よく観たら、他の色々な映画の要素が入った手の込んだ作り込まれた映画なんでは?」と、再び再評価する声も。

私は駄作とまでは思いません。ホラーとして観れば、十分に怖いですから。(ノーカット版はもっと凄いそうですよ。)

ただし、これをSFと見るのは全く違うのではないかと…。
だから概要でも、ジャンルを「SFホラー」ではなく「SF風ホラー」と書いたんですけどね、宇宙空間に吹き飛ばされた人が、また性懲りもなく船内に出現しては、科学もクソもないでしょうが!w

博士がもっともらしい科学理論をクルーらに説明するシーンがあります。
これは、いわゆるワープ航法の理論で、科学番組やドラえもんなんかでも、よく見かける紙を折り曲げて2つの離れた点をくっつけるというアレ。
そういう事を自身の研究により出来る機械を作り上げたとウェアー博士は仰るんですが、なぜかしら、それを実行したら宇宙の外側へ行っちゃった~って、それ明らかに失敗やないの?!ww
で、その宇宙の外側がダークな悪意に満ちた世界って…そんな観念オンリーの世界に何故なってしまうのか?
物質としての宇宙の外には物質はなく、悪という観念だけがある世界って、もう全然、科学関係なくない?

…そんなわけで前半はSFのフリをしていますが、後半は科学理論なんぞ、すべてが吹っ飛んだスペーススプラッター映画なのでした。
韓国ドラマのご紹介です。

アンニョン! コ・ボンシルさん 最終回36話まで視終り

韓国語で「アジュマ」 って聴こえるけど、正確には「アジュンマ」だという「おばさん」という言葉。韓ドラファンの皆さんにはもうお馴染みですよね?今回ご紹介するのは、そんなアジュンマであるボンシルさんが主人公のドラマです。

アンニョン! コ・ボンシルさん 概要


2011年12月~2012年4月に放送されたドラマ。
演出:ユン・サンホ
脚本:パク・ウンリョン
主演:「国民の母」の代名詞を持つ韓国のオンマ女優、キム・ヘスク。

海の見える町・南海(慶尚南道の南海島)で花を育てて暮らすコ・ボンシルさんは、優しく純粋で善良なおばさん。
家族にも、経済的にも恵まれ何不自由なかったのに、突然の夫の死を切欠に、莫大な借金を抱え込んでしまう。

アンニョン! コ・ボンシルさん 第1話はリンク先にて無料で観られます。


アンニョン! コ・ボンシルさん ネタバレ・あらすじ


美しい南海の自然を背景に、物語の冒頭では、
本当に優雅で楽しそうにガーデニングに毎日いそしんでいたボンシルさん。
彼女は素敵な夫(ジュンソク)に擁護され、南海に、持ち家と広いお庭と、更に花を育てる温室まで持っていて、つくづく羨ましい環境でガーデニングを楽しんでいました。
手作りの押し花は、カードにして家族や知人にメッセージやお手紙を送る時のアイテムとして活用しています。
もう娘2人は大きくなってソウルで暮らしているので、育児に忙しかった時代も卒業しています。
そして夫もまた、古物商としての成功を収めてソウル住まい。
でも、娘たちも夫も、家族の行事がある時には帰って来てくれます。
夫ジュンソクの兄ジュンテの誕生日の日にも、家族が帰省して家に集合。
南海のご近所さんも集まって、それはそれは賑やかに誕生会を楽しんでいました。

ジュンソクも久しぶりに会う娘や孫たちと楽しそうにしていたのに、いつの間にやら姿が見えません。
実はこの日、文化財の密輸容疑で検察からの出頭要請が届き、ジュンソクは身に覚えのない事に驚くと共に頭を抱え込んでいました。
文化財の密輸は、昔馴染みで後輩のオ・ジンチョルの仕業で、その弟ビョングンに貸してあった大金も返済のメドが立たないと言われ、金策に奔走していたのです。
しかし金策は上手くゆかず…そのまま戻らなかったジュンソク。
ボンシルさんと家族が心配していたところ、崖下の波打ち際でジュンソクの遺体が発見されます。
突然、不幸のどん底に突き落とされたボンシルさんと家族ですが、言い知れぬ悲しみの中からも少しずつ上を向いて歩き出そうとするボンシルさんでした。

アンニョン! コ・ボンシルさん 感想



「国民の母」だなんて呼ばれる女優さん、韓国にはいらっしゃるんですね!
日本にはそんな女優いませんよね?
だから正直、そういう女優さんのいらっしゃる韓国が羨ましい。
 そもそもが日本には、おばさんがヒロインを務めるドラマなんて制作されないよね?
制作されないって事はおそらく「国民も、そういうのは求めていないだろう。」と制作サイドが見なしてるんだろうと思うけどね。

若い人たちが、テレビ離れしてる昨今なんだから、日本のテレビ業界の人も、もう一度ターゲットとする視聴者層を見直してみる必要があるかもよ。


あら、あら…ドラマの感想を書く筈が、話が逸脱してしまった。
さてさて『アンニョン! コ・ボンシルさん』の感想ですが、
ドラマの最初の方では、
家族がみんなソウルへ行ってしまってるから、普段は、ちょっと寂しいけど、それでも大好きなガーデニングを好きなだけやって幸せに暮らしてるボンシルさんが、凄く羨ましかった。
経済的な心配は一切なく、植物の事だけ考えていればいい暮らしなんて、しかも温室まで持ってるなんて、至福のガーデナーですよ~!

ストーリーがちょっと進んで、夫が亡くなり、ボンシルさんが不幸と苦労の真っ只中にいた頃に、人助けをしたお礼にと貰ったのが、名前も知らぬ南米原産の植物の種子…てな事で、
ここでも植物が登場!!(このあたり、ちょっと日本の民話っぽいねw)
この植物がまたすっごい効能のある滋養と強壮に富んでいて、迷えるボンシルさんをグイグイと光の当たる方向へ導いていってくれるのね。
この辺りのストーリー展開の仕方が実にうまいなぁ~と思うし、ガーデニングを趣味としている人は、とっても興味深く観られるかと思いますよ。

そして、脇を固める俳優陣も、みなさんキャラがあってイイ味を出していた♪
デイビット・キム役のチョン・ホジンさんが、一代で巨万の富を築いた、闇の世界にも顔の利く実力派企業家という役どころなんですが、この渋い強面なおじ様が、ボンシルさんに〝ほの字”となってからは、照れたり、慌てたり、ボンシルさんのちょっとした反応を気にしたりと、とても可愛らしいww
私が、チョン・ホジンさんを初めて見たのは「トンイ」でのトンイの父親役でしたが、この時は、両班の弾圧にけっして屈しない※1剣契(コクゲ)のリーダーにして、娘想いの優しい父親でした。
[※1剣契(コクゲ)…賤民が集まって作った組織で、仲間を両班の横暴から助けるのが目的。]
その善良なイメージから一転して、現代ものでは、自分の出世のためならば手段を選ばないという悪役もよくされていて、芸達者な方ですよ♪

次に、日本のお笑いさんのホンコンさんに似てると言えば、あの人!そうチョン・マングム役のウ・ヒョンさんですね。
この人の線の細い優しそうな感じは、役作りなのか?それともご本人の本質から来るのか?そのどっちなのかは、他のドラマに出演されているのを見た事がないので正直わかりません。
でも劇中でも何かと顔が話題になるように、その、たいへん個性的な風貌は、ホンコンさんに良く似てらっしゃるのでは?
[投票はコチラ⇒ほんこんと ウ・ヒョン(俳優)は似てる?]
でもまぁ、ホンコンさんは天才バカボンのおまわりさんにも鼻のあたりが似てるけどねw。

そして、このドラマの魅力は、年齢やジェンダーなんかで一切の分け隔てのないところでもあります。
日本でも名が売れたハリスさんと、若手のチェ・ハンビッちゃんが、ニューハーフの役で出演されています。
(ニューハーフとトランスジェンダーの違いは、外科的手術を望むか望まないかだそうで、望む方がニューハーフ。)

とうとう物語の最後まで、伏線回収しなかった部分としては、長女、ユニョンのドラマに誘われて芸能界へ復帰した大女優イ・ジョンヨン(シン・ウンジョン)と、ライバル女優のバトルです。
ライバル女優は、凄く性格の悪いのが原因で、デイビット・キムと離婚した彼の元妻でもあったので、ここらへんはキチンとカタを付けて欲しかったところだけど…ボンシルさんとそのファミリーが全員、心安らかに落ち着いたので、まっ、いいか~ww

ヒロインを務めるボンシルさんを見ていると、まあるくて可愛い姫ダルマを思い出すのは私だけでしょうか?

白黒つけなかったボンシルさんの恋については、ラストシーン、故郷の風光明媚なあの桜並木で、希望と余韻と予感を漂わせての、素敵な終わり方でございました。
洋画のご紹介です。

映画 THE GREY 凍える太陽ネタバレ・あらすじ・感想 


映画 THE GREY 凍える太陽 概要


2012年公開のアメリカ映画。
監督:ジョー・カーナハン
主演:リーアム・ニーソン
ジャンル:サバイバル・アクション。

飛行機事故で極寒のアラスカに墜落した7人の生存者たちの、生き残りをかけた壮絶な闘いを描く。

映画 THE GREY 凍える太陽 ネタバレ・あらすじ


石油会社の採掘場に雇われたハンターのオットウェイは、最愛の女性を失い、生きる意義の見えない日々を送っていた。
死んでしまおうかと、一度は猟銃を口に銜えて、引き金に手を掛けたが、指先に力を込めて引く寸前で、遥か遠くの山から聞える狼の雄叫びが、その自殺を引き止めた。
いつ死んでも、良いには良いが、
父が遺した詩のように、もう一度だけ最強の敵を倒せたならば、その日に死んでも悔いはない。…そんな想いに囚われていたからだ。

作業がオフのシーズンを迎え、家族の元へ帰る他の作業員共々、飛行機に乗り込んだオットウェイ。
ところが、離陸間もなく飛行機は嵐に巻き込まれ、アラスカの雪深い山中に墜落する。
機体は無残に壊れ、大半の者は死んだが、
オットウェイは自分を含む8人の生存者を確認する。
だが1名は怪我が深く、数時間後に息を引き取る。

残り7名が取り合えず、飛行機の残骸後で肩を寄せ合い、燃やせるものは何でも燃やして暖を取る。
しかし間もなく、自分たちが、狼の縄張りに来てしまったことに気付き狼狽する。
朝になるのを待ち一夜を明かすうちに、狼に襲われて1名が死亡。

進んで、あれこれと指示を出し、なんとなくリーダーのような雰囲気になっていたオットウェイは「救助を待つよりも、狼を避けるために、向こうに見える森へ逃げたほうが安全だ。」と提案した。
反対する者も何名かいたが、オットウェイが「自分の仕事は狼を殺す事だ。だから狼の習性は良くわかっている。」などと知ったかぶりをしたせいか?結局は全員ついて来た。
自然の猛威と空腹と疲れと、更に狼の群れとまで戦いながら、
生きて帰ろうと、南へ向かう生存者の運命や如何に?


映画 THE GREY 凍える太陽 感想


正直な話、サバイバルもので、こんなにもサバイバルスキルの低い人がリーダーになってしまう映画って初めて観たわ。
「狼の習性は良くわかっている。」とか言っときながら、最終的に辿り着いたのが、狼の巣穴ってアンタ!
それで、どの場所にいる時も常に、狼の標的になってたんだな。
結局1人の転落死と、もう1人の凍死を除いて、後は全員が狼絡みで命を落としていると言うんだから、森目指しても全然、狼を避けられてないし、せっかく凄まじい飛行機事故から生き残った甲斐がないわ!

そんで最後に主人公1人が生き残り、狼のリーダーとタイマンを張る。
でも、それって…最初、自殺しようとしていた主人公の希望通りになってるんやねん。

映画のラストメッセージが、厳しい環境の中で生き抜こうとする7人の男たちの勇気ではなくて、そんな主人公の個人的な勝負魂みたいなものだなんて…死んでいった人たちが可哀そう過ぎるやろ!
観客にとっては、そのような個人的な勝負魂には、あんまり興味が持てないのではないだろうか?
少なくとも、私は、そこんとこはどうでも良かった。
それよりも、1人でも多く生き残って欲しいと願うような気持ちで観るというスタンス。
サバイバルものって、それに尽きると思われ、
そもそもが、サバイバルものに、自殺願望のある主人公の余計な拘りを持ち込んだ事が、この映画を興醒めにしてしまってる。




洋画のご紹介です。

映画 惑星ソラリス(A・タルコフスキー) ネタバレ・あらすじ・ラスト

この物語は、とある惑星を舞台にした哲学的な話。
「私は、蝶の夢を見ているのか?それとも、蝶の夢の中にいるのか?」という荘子の説話『胡蝶の夢(こちょうのゆめ)』とも通じるような…。
また、心が主か?それとも物質が主か?という観念論と物質論が、改めてあなたの脳味噌を横断するかもしれない。

映画 惑星ソラリス(A・タルコフスキー) 概要


1977年日本公開の映画。
監督: アンドレイ・タルコフスキー
原作: ソラリスの陽のもとに
主演:ドナタス・バニオニス


映画 惑星ソラリス(A・タルコフスキー) ネタバレ・あらすじ


惑星ソラリス。
それは宇宙のかなたの星であった。
その観測結果から
「ソラリスは、生物の存在は確認されないものの、知性を持った有機体と推測されるプラズマ状の“海”に被われた星である。」との情報がもたらされると、
世界中の科学者達の注目が集まり、不思議な星ソラリスの研究が熱心に行われるようになった。

ソラリスの"海"と接触しようとする試みは、
宇宙飛行士を送り込み、幾度か繰り返されてきたが、いずれも失敗に終った。

そして時が流れ、宇宙飛行士も、親から子供世代へとバトンが渡された。
今や音信の途絶えているソラリスの軌道上にある観測ステーション。
そこには3名の宇宙飛行士が常勤していた筈であるが、現在の状況は不明なままである。
そこで新たに、心理学者クリスが原因究明のために送り込まれる事となる。
美しい緑に囲まれた我が家を後に宇宙ステーションヘと飛び立つクリス。
しかし、クリスが観測ステーションへ行ってみると…そこは混乱状態で、研究どころではない。

物理学者ギバリャンは謎の自殺を遂げ、残った2人の科学者も何者かに怯えているようで様子がおかしい。
2人はめいめいの部屋でバラバラに暮らし、お互いに引き籠りになっているような有様であった。
それに、いる筈のない子供がいたり、科学者は真相を語ろうとしなかったりで
「一体どうなっている?」と首を捻るクリスの前に、
すでに10年前に自殺した妻ハリーが現われる。
やがて、彼女は、
クリスの深層心理にアクセスする事により、彼の思念の中の望みを感知して、ソラリスの"海"が作り出した、
実体を伴う幻だという事が判明する。
実体を伴うという事は、物質として存在するという事で、触る事も出来る。
ソラリスの"海"は、人間の潜在意識を探り出してそれを実体化するという手品が出来る…じゃなくて能力を持っていたのだ。

最初は「気色悪いわ~!」と思って、幻の妻を、宇宙へ捨てるという荒業に出たクリスであったが、
心の深いところでは、妻の自殺に悔恨の思いを抱いておったので、
やがて、懲りずにまた"海"が作った幻の妻を、幻と承知の上で、愛するようになる。

結局のところ、先にいた2名の科学者も、ソラリスの"海"に、それぞれの深層心理を探られ、望みを知られて、幻でその望み通りのものを作り出されて与えられていたのだ。
この観測ステーションにいる限りは、幻は、その存在を維持出来るのだが、地球へと連れ帰ると消えるだろう。
だから、科学者としての使命を全うするために、地球へ一人で帰るよりも、ここで幻と一緒に暮らした方がハッピーなんじゃない?

そんな立場上の義務と個人的な欲求の板挟みで悩みに悩んだ末に、クリスの取った選択は…?。

映画 惑星ソラリス(A・タルコフスキー) 感想とラスト


2時間 49分と結構、長いね。

ラストは、一応、クリスは地球へと帰還するんだけど、その帰還した故郷自体が、本物ぢゃなくて、ソラリスの"海"の見せる幻覚だったんだよ。というオチ。
で、更にもっと突っ込んで考えると、最初、地球の故郷にクリスが暮らしてるシーンから映画は始まるんですが、
本当はもう、そこんとこから実は、ステーションにいて(あるいはソラリスの島にいて)その地球の故郷も、出て来る人々も、果てはクリス自身までもが、すべては、海が作った幻だったんじゃないか?と考える事も出来るようです。
この海は、まことしやかに、本物そっくりに作る凄腕の技術を持ってるようなのでww

《以下は感想》
んん…一応、ジャンルとしては、SF小説が原作のSF映画やねんけどな、SF映画に有り勝ちのハラハラドキドキは一切ないねんな~これが。
それがSFファンとしては残念なとこやね。

人間の深層心理にある思念を形にするって…精神と物質という異質なものを、そんなに簡単に、垣根を超えて融合させちゃっていいのでしょうか?
哲学を勉強した事のある人なら理解しやすいかもしれませんが、私のようなIQ低めの凡人は、ちょっと理解に苦しみます。
でも、海という生き物以外の物質が意思を持つ物語がアリならば、
海以外のありとあらゆる物質で、意思を持ってると定義した物語制作がアリって事になりますやん。
まぁ、そういう目先の変わった発想は面白いかとは思うんですが、ストーリー展開として面白く仕上がっているかというと、そっちは完全に滑ってるような気がします。


吉原炎上 ネタバレ まとめ


吉原が最も華やいだ明治末期を舞台に、そこに生きた様々な女たちの姿を、実在した花魁の目を通して見た残酷で美しい物語。

映画 吉原炎上 ネタバレ・あらすじ・感想・疑問
映画「吉原炎上」の別の見方
ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その1
ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その2
ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その3
ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その4
ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その5
ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その6

★まとめ記事は、読みやすいブログ構成のために、ブログ目次を作る上で、重要な記事になります。
関連記事と内容が被る点は、何卒、ご了承下さい。
ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その5の続き。

ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その6



明治44年 春のある日。
この日、ついに紫の花魁道中が実施される。
吉原のすべての女郎屋が協賛しての初の大規模なイベントだけあって、町中がお祭り気分で華やいでいた。

「その日まで生きていられるかな私。」と心配していた雪乃も、小康状態を保っており、2階に宛がわれた自室の窓から様子を見ていた。

ゆっくりと紫が歩き出す。

雪乃に「久ちゃんは、どうして花魁道中をやりたいなんて言い出したの?」と問われた時、久野はこう答えた。
「花魁道中は、私たちの叫びみたいな気がするから。」と。
お金で品物のように売られて来た女たちの叫び。
女を売り買いする人たちへの、
蔑んだ目で見る世間への、
蔑んでいる癖に、買う男たちへの叫び。
物のように人から扱われ、売り買いされ、見下されても、私たちはちゃんと生きているんだ。…こんなに綺麗で、こんなに優雅に命を輝かせて、逞しく生きている。
そう世間に知らしめたい、女の心の叫びだと。

見てみなよ、ほら。
女の生血を吸って成り立っているこんな赤い地獄の中だって、あたしたちは、こんなに綺麗な花を咲かせられるんだ。

綺麗な、綺麗な、花。


傷つきながら咲いて、そして散って行った。
一人、一人の女たちの哀しみを抱えながら、
紫は、桜、舞い散る道行きの一歩、一歩を進めた。

通り過ぎて言った、さまざまな花魁たちの面影が、紫の胸に去来する。
彼女たちと共に、歩いているような気持ちで、胸を張って、紫は町中を練り歩いた。



吉原の町に火の手が上がったのは、その日の夜遅く、みなが寝静まった頃の事であった。

気性の激しい鶴尾が、紫への妬みから付け火をしたのだ。
雪乃は自ら炎の中へ進んでゆく。
花魁道中のつもりなのだ。
焼け落ちた柱が燃え上がり、久野と雪乃の間を遮り阻んだ。
最後に「久ちゃんがいたから生きてこれた。ありがとう。」と礼を述べ「あたしの最後の花魁道中、見ててね。」と言って、炎の中へ消えて行った。
久野は「雪ちゃん!」と、何度も名を叫び助けようとしたが、男衆らに無理やり外へと連れ出された。


火事は瞬く間に吉原中に燃え広がり、焼きつくし、
廓のほとんどは焼け落ち、徳川時代から、およそ300年続いた吉原の町は見る影もなくなる。

翌、明治45年。
一応、吉原は再建されたが、昔の面影はどこにもなく、
花魁と呼ばれた女たちは、娼婦としか呼ばれなくなった。


火事から3年後の大正2年 春。
久野は、大倉の家を訪ねた。
自分の力で借金を返し終えての事である。
3年も経てば、もう結婚されて、子供さんの一人や二人、授かっておられるかもしれないのは承知の上で。

緊張して、目もマトモには合わせられず、深く平伏して
「ご迷惑なのは重々、承知しておりますが、ご挨拶だけはと思い…。」と言った久野に、大倉は「よく、よく頑張ったね。」と声を掛けてくれた。
そこで初めて、久野は顔を上げて大倉の顔を見た。
すると、彼の口からは「待ってたよ…ずっと。」の言葉が…。
「5年でも10年でも、ずっと待とうと思っていた。」と言ってくれた大倉の言葉に、久野の目はみるみる涙で溢れた。

翌年、内田久野は大倉修一郎と結婚し一女を儲けた。
そして、その子を、雪乃と名付けた。

[おわり]

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明治43年12月。
この日、大倉の絵のモデルをしていた紫は、手元の針仕事が完成した時に「出来た!」と思わず笑みが漏れ、
それを見た大倉は「笑った!」と喜んだ。
「え?」
無意識だったので紫は「嘘ですよ~笑ってません。」と否定する。
「いや、笑った!君は笑ってる方が綺麗だよ。」と大倉。
「笑ってません!」
「いや、笑った。」と他愛のないやりとりを繰り返し、結局
紫は最後には笑ってしまう。

夜遅く、雪が降り出した中を、歩いて帰ると言う大倉を送りに出て、去りゆく後姿を見送りながら、
紫は心に温かい余韻を感じていた。
この気持ちは…違う、惚れたりしたんじゃない。
そう自分に言い聞かせる。

一方、大倉の方でも、紫の笑顔が見れたという、そんなささやかな出来事に、言い知れぬ充実感を感じている自分の
この気持ちは…まさか、恋というものなのだろうかと戸惑いを覚えていた。

やがて、絵が完成すると大倉は、その絵を額縁に入れて紫に送り、その後、暫く夕凪楼へ姿を見せなくなった。
その頃、白妙の馴染みの金持ちの客が、紫を気に入って
白妙から足が遠のくという出来事があり、
白妙は自分の客を取ったと紫に怒りをぶつけに来た。
煩わしがって紫がマトモに取り合わないでいると、白妙は「あの絵描きの客に逃げられたからって何も、あたしの客に手出す事ないだろ!」と見当違いな言い掛かりを付けだして、その上、大倉や紫を侮辱するような事まで口走るので、とうとう2人は取っ組み合いの喧嘩になった。
ところが、店の中で掴み合いながら、雪が積もる外まで転がり出て、上になり下になり叩き合っていると、そのうち白妙の動きが止まり…雪の上に血を吐いた。
それでもまだ憎まれ口を叩きながら体ごと雪の上に倒れ込んだ白妙。
紫は、突然の事に驚き、その白妙の様子にたじろぎ、立ちすくむ。

その後、医者を呼んで診察してもらうと、病状はかなり進んでおり「この冬は越せないだろう。」との診たてであった。
この時、紫は、スマと交わした会話から初めて、
白妙が天涯孤独の身の上であった事を知る。
初めて出会った頃に、家族のために頑張るんだと話していたのに何故…?

あまりに病状が重いので、住み替えを強要するわけにもいかず、仕方なく白妙は夕凪楼で面倒を見るとスマは言った。
だが「感染する病気だから、くれぐれも、白妙の部屋には入らないでおくれよ。」と、スマは紫に釘を刺す。
再び紫は夕凪楼の御職になった。
再び自分の物となった御職の部屋。
不幸がある度に主を変える部屋。
白妙の家具が運び出されたそのがらんどうの部屋で、紫は
「雪ちゃん…」と呟き泣いた。


明治44年 正月。
紫に身請け話が来た。
先方は正式な妻として紫を迎えたいと仰っている。
なんと、その相手は、これまで自分に指一本、触れた事のない、あの大倉だ。
大倉は4月に海外への駐在の辞令が降りており、その前に紫を妻として娶りたいとの事。
捨てられたわけではなかった。…紫は、大倉から贈られた
自分の似顔絵を取り出してジッと見つめてみた。
身も心も凍らせて、こんなに寂しそうな味気ない顔つきになった自分を、有りのまま正直に紙に写しながら、
長い間、見守り、気長に、待ってくれた…唯一無二の、たった一人の人。
汚れた身体や身分を蔑む事もなく、同じ人間として分け隔てなく、
一人の女として大切に接してくれた人。

もうこれ以上ないほどの幸せの絶頂期を迎えた紫であるが、
あろう事か…もう二度と来ないであろう最高条件でのこの身請け話を紫は断った。
前々から胸の奥深くで育てて来た、ある一つの計画を実行に移すために。
それは花魁道中だ。

紫が、絶対に入るなと釘を刺されていた雪乃の部屋に入ると、背を向けて「身請け話を自慢しに来たのか!」と相変わらずの憎まれ口を叩く雪乃。
紫は「その話は断った。」と告げ、雪乃をずいぶんと呆れさせた。
そして、紫は久野に戻り、雪乃に、
「あたしたちが初めて会った日に見た花魁道中の事を覚えている?」と聞く。
「綺麗で華やかで、まるで夢の世界の出来事のようだった。」
微笑みを浮かべながら久野は語り、その時に二人で一緒に見た「いつか花魁道中をするんだ。」という夢を実現させると言う。
「久ちゃんには手を差し伸べてくれてる人がいるのに、なんで?なんでよ!」
さっきまで嫉妬から恐い顔をして、憎まれ口を叩いていたのに、雪乃は折角の機会をフィにする久野の行動を、
今は涙を浮かべて猛反対していた。
すっかりと出会った頃の雪乃に戻って。

仲直りした後、雪乃は久野を、堕胎した自分の子供を根本に埋めた大木の所へ連れてきた。
「誰の子かわからないけれど、本当は、あたし産みたかった。」と言って泣く雪乃。
家族のいない雪乃の、それが本音だったが、そんな想いを胸の奥に隠したまま、一人で始末したのだと言う。
女の子だったその子を、土を掘って此処に埋めて、その帰り道で、勇吉と連れ立って歩く、あの時の久野に会ったのだと打ち明けた。
雪乃が、やけに生気のないぼんやりとした様子で、トボトボと道を歩いて来たあの時の事だ。

あの時、幸せそうに輝いている久野を見て「なんで、あたしだけが…」そう感じて、久野の事が憎らしくなり、
そこから、どんどん捻じくれて、久野の幸せを呪い、おかしくなっていったのだと打ち明けた。

「だから、あたし、久ちゃんにあんな事を。ごめんね。今更、謝っても仕方ないけど。」地面に手を付いて謝る雪乃。
真相を知った久野は、あの時、自分の幸せにのぼせあがり、
雪乃の様子がおかしい事に気付いてあげられなかった自分を悔やんだ。
「辛い思いしたね。よく辛抱したね~偉いよ。雪ちゃんは。」雪乃の両手を取って、そう励ます。
雪乃は、久野の胸の中に倒れ込むようにして泣いた。
久野も雪乃の肩を抱きながら泣いた。
「わかってあげられなくて、本当にごめんね。」と。

久野と雪乃。
二人が和解してから暫く後の事。
紫に袖にされた形の大倉が、再び夕凪楼へやって来た。
部屋に上がった大倉は言った。
「今日は君の時間を買いに来たんじゃない。君の身体を買いに来た。」
「その前にお話したい事がございます。」冷静な口調で前置きし、
紫は、ここへ来る前、ここに来てからの自分の身の上話を暫くした。
「ここでの暮らしに耐えられたのは、年季が明けたら、好きな人と一緒になれる…その夢があったから。でも…その夢が壊れてしまった日の事は、あなたもご存じですよね?」
惨めな思いをして、あの時にわかった事。
それから「心も身体も凍らせて生きてやる。」と固く決意して、今日まで生きて来た事。
「でも、たった一度だけ私…」凍らせた心が溶けそうになったのだと、続けたかった言葉を飲み込み
「あなたから、身請けの話を頂いた時、私本当に嬉しかった。」
そう素直に心情を打ち明けた紫。
「だったら…。」と言い掛けた大倉の言葉を遮って
「でも、お受けする事は出来なかった。どうしても。」と言う。
その理由を尋ねる大倉に紫は
「身請けと言うのは私にとって、売られるのと同じだからです。買われる事と同じだからです。」と話す。
「私は、あなただからこそ、お金なんかで買われたくない。私は自分自身の力で大門を出て行きたい。」
その言葉を聞いて大倉は、どんな境遇にあっても人としての誇りを見失わない尊い生き方に、胸を打たれた。
そして、それと同時に、そんな久野の気持ちもわからず、金で彼女を買おうとしていた自分を恥じた。

「勝手な事ばかり申し上げました。でもこれが私の本当の気持ちです。」と言って、深々と頭を下げる久野。
誇りのために、あえて回り道をしようとしている久野を、頼もしくも痛ましくも感じながら、大倉は「わかった!だったらそうしよう。」と答えた。
そして、久野を抱く事はせず、部屋を出て行った。

その翌日であろうか?
それとも翌々日であっただろうか?
紫は赤倉夫妻に頭を下げて花魁道中をさせてくれるように頼んだ。
道中に掛かる費用は自分の借金に上乗せしてくれていいとも伝えた。
「そんな借金抱えたら一生、この吉原に沈んだままになってしまうかもしれないんだよ!」
驚いて、二人は何とか思いとどまらせようとしたが、紫の覚悟は固く、どうしてもと言うので、
これ以後、店主の赤倉鉄之助は、資金繰りと準備のために奔走する事になる。
赤倉は、ことさらに可愛がっていた紫のためだからと、今回の花魁道中は、これまでのそれとは違い、吉原全体で行う大規模な催しとしてやれないかと組合で提案してくれた。
赤倉の提案は満場一で賛同を受けて承諾された。
そして、費用は全額、組合が出すという事で、紫の借金が上乗せさせる事もない。

道中は桜の花が咲く頃に実施される事も決まった。

ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その6へ続く。

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明治42年の夏。
互いの店で二枚目を張る若汐と白妙は、今や、道ですれ違っても挨拶すらしない。
かつて、あれほど仲睦まじかった事が嘘のように。

お兼が若汐を呼び止めて「近江楼の白妙さん、ついに御職(おしょく)だそうです。」と、わざわざ告げた。
「近江楼の勝気な花魁、白妙か?それとも夕凪楼の笑わぬ花魁、若汐か?吉原の人気を二分する二枚目同士、ついに決着か?」
お兼は茶化すように若汐に扇子を振りながら言う。
その直後、店主の赤倉に呼ばれて行ってみると、若汐もまた、そろそろ御職(おしょく)になる時期だろうと言う話だった。
若汐は左京への遠慮があったので、躊躇したが、
赤倉が「左京は住み替えなんだよ。」と言うので、左京を慕っていた若汐は驚いて、その理由を尋ねる。
スマが「あの子の事は、外へ行ってあんまり言って欲しくないんだけど…」と釘を刺して言うには、左京は病気をうつされたと。

若汐はそれを聞いて「病気になったからって左京さんを追い出したんですか!なんでそんな酷い事を!」と赤倉、スマ、お兼に怒った。
しかし、逆に「おまえさん何か勘違いしているんじゃないかい?ここはね、元々、酷いところんんだよ。女の生血を吸って成り立っている場所。そこで、あたしゃ金儲けをしている極悪人だ。」と赤倉に言い負かされる。
女郎屋の店主と言えど、普段、物腰の柔らかい赤倉の事を確かに若汐は、勘違いしていたのかもしれなかった。

「金儲けのためだったら、この夕凪楼を繁盛させるためだったら、あたしゃ、どんな事だってするんだよ。
あんな病気持ちの女郎を御職(おしょく)として、この店に置いといたら、この夕凪楼の先行きがどうなるのか?それくらいおまえさんにだってわかるだろう!」
酷い話だが、吉原では常識で通っている話を赤倉は懇々と若汐に言って聞かせた。
そして、いつになく厳しい表情で「左京の事は二度と、私の前で口にするんじゃない!」と釘を刺すと、改めて、若汐に、御職(おしょく)を引き継ぐ事を頼んだのである。

若汐は、改めて自分は地獄にいる事を思い知らされた。
しかも聞かされたのは〝明日は我が身”のやるせない話。
若汐は御職(おしょく)女郎への昇格を諸手を挙げて喜ぶ気持ちにはなれなかったが、
わだかまりを残しつつも、紫という新しい源氏名で御職(おしょく)を引き受けざるおえなかった。

左京の部屋の豪華な家具はたちまち男衆らに運び出されて、新たに紫がその部屋の主となった。
大倉は今でも、定期的に紫の絵を描きに通って来ていた。
その日、大倉の描いた自分のスケッチを見て、紫は尋ねた。
「私、そんなに寂しそうな顔をしていますか?」
大倉は「一度だけでも君の笑った顔が見たい。」と願ったが、未来に掛ける夢ひとつない紫には、心の氷塊を溶かす理由が見当たらない。


大倉は外務省の役人で、元々が真面目で有能な男であっただけに、いったいどうした事かと、
彼の吉原通いは省内で、もっぱらの噂となっていた。
そんな大倉は友人から、諸外国の手前、もっと身を律せよと注意されるが、後ろ暗い所のない彼は「相変わらず、おまえは心配性だな。それくらい俺だって、ちゃんと弁えているよ。」と一笑に付した。

左京が部屋に置き忘れた簪を届けようと、紫は、住み替え先を訪ねて行ったが、もう左京はそこからも落ちて、東河岸の羅生門河岸にいると言う。
加齢や病気で、ほとんど誰からも相手にされなくなった花魁たちが落ちて行き着く場所だ。
しかし紫が、そこを訪ねてみると、もう左京は死んだと聞かされた。

いつか足抜けをして追手の男達に追い詰められて、自分の首を切った、あの花魁(鶴尾)がそこにいて左京の最後の様子を話してくれた。
病気の毒が頭に回って気が触れていたが、それでも食べていかなければならないから、縋るように客を引いていたそうだ。
吉原に初めて来た日に見た、あんなにも華やいで綺麗だったあの人の、そんな惨めな姿を若汐は信じる事が出来なかった。
「違う!そんなの左京さんじゃない!」悲しみのあまりそう叫んだが、その女々しい様子が鶴尾の癇に障る。
「おまえらなんかに、ここの女の事がわかってたまるか!お嬢さんは、さっさと帰りやがれ!」と背中に罵声を浴びせかけられて、「違う、違う…」と、左京の簪をギュと握りしめて泣いた。


明治43年3月。
近江楼が廃業する事になり、そこにいた花魁たちを他の店で分けて引き取ろうと話が決まり、
夕凪楼には御職の白妙他10名ほどが来る事となった。
一件の女郎屋に2人の御職がいてはおかしいので、紫は二枚目に降りる事となる。
気が強い花魁と前々から評判で、言いたい事をズケズケ言う白妙は夕凪楼に来ると、紫がいまだに張り見世に出ている事に難癖を付けて絡んできた。
しかし紫も黙ってはいない。
「吉原のしきたりを無視して花魁の地位と立場を貶めるな。部屋持ちは部屋持ちらしくしてこそ、花魁の格が保たれる。」と白妙から非難されるも、鼻で笑って言い返す。
「御職だろうが部屋持ちだろうが女郎はしょせん女郎。羅生門河岸の女と変わる事なんかどこにもない。」と。
羅生門河岸の女と一纏めにされて白妙は烈火のごとく怒る。
紫の心には、それを自分に教えてくれたのは白妙だったじゃないか~今更、何を上気(のぼ)せてやがるんだ!…という思いがあったから譲れない。
2人の間で火花が散った。

ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その5へ続く。

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ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その3


「株相場に手を出してしくじり、お客の金を使い込み、警察からは既に指名手配されていた如月の客は、もう後がないと思い、最初から心中するつもりで、夕凪楼へやって来たのだろう。」と赤倉スマ。
夕べは夕凪楼の端部屋の女郎全員を集めて御ちそうを振る舞い、芸者まで呼んで羽振りの良さを見せつけていた。
だが、それは虚勢を張った見せかけだけの姿で、実のところは無一文で、死ぬ前の最後の大見栄の饗宴であったのだ。

「如月は元々、娘の難病を治す治療費を稼ぐため、吉原に売られて来た。
ところが、娘は死んでしまい、亭主は如月が身を売った金を持って、他の女と行方をくらますしで、可哀そうな女だった。」とお兼。
その話を聞いて若汐は
「ちゃんと生きて必ずお母さんに会うんだよ。」と言った如月の心の内には、娘への果たせなかった想いがあった事を知った。

吉原で死んだ女たちは、特に葬式もされず、多くの場合、引き取り手のない遺体は、すべて三ノ輪の浄閑寺へ運ばれた。
死んでも大門から出る事は許されず、誰にも見られる事のないように、明け方こっそり裏口からお歯黒ドブを渡って運ばれた。


年が明けて明治41年の春。
この日、若汐は、昼間から勇吉が迎えに来て、連れ立って
写真を撮りに出かけた。
勇吉の身なりは立派な紳士で、とても海軍で働く兵隊風情には見えない。
途中、白妙の姿が見えたので、若汐が「雪ちゃん、雪ちゃん!」と呼び止めるが、白妙は今一つ元気がない。
若汐は白妙に、写真を撮りに行く事を告げて「あの人と一緒に。」と、勇吉の立っている場所を振り向いた。
視線の先に勇吉を見ると、何故か、白妙の笑顔は消えた。
「お客さん?」と尋ねる白妙に、若汐は、いつか話した幼馴染である事と、年季が明けたら一緒になる事を話して別れた。

数日後、夕凪楼で刃傷沙汰があった。
花里に入れ込んで妻も子も捨てて金を使い果たした客が、金の切れ目が縁の切れ目とばかりに、花里に冷たくされた事に腹を立てたのだ。
花里が寝物語に「一緒に死んでもいい。」と言った言葉を客は真に受けていたようだ。
包丁を持ったまま、男は外に逃げた花里を追いかけて行った。
この日は大雨で、花里は今まで必死に貯め込んだ壺を持って逃げていたが、躓いて転んでしまい壺が割れ、中の金が、じゃじゃぶりの雨の下で散らばる。
必死に拾い集める花里の背中を、男が後ろから一突きにした。
馬乗りになり3度も4度も突かれて花里は息絶えた。

雨が上がったその日の夜、若汐は左京と共に、窓辺から花火を見物していた。
すると、ふいに左京がつぶやいた。
「女郎なんて花火と同じ。パーッと一瞬、咲いたかと思うと、後は藻屑になって散って行くだけ。如月も花里も散って行った。」
美しく燃えるのは、咲き誇るのは、その時だけの、花火にも、桜にも似て…女郎の命はなんと儚いものだろうか。


それでも、自分には、待っていてくれる勇吉がいるから、他の花魁とは違う。
いつか年季が明けたら、ここを出て、ごく普通の女のように、幸せになれると思っていた若汐だった。
ところが、そんな若汐の夢も、ある日、木端微塵に打ち砕かれるのである。

信じ切っていた勇吉が、実は海軍の兵隊などではなく、大きな海産物問屋の入り婿で、妻も子もいたのだ。
その現実を若汐に突き付けたのは、他ならぬ白妙であった。

最初は信じられなかったが、足抜けと間違えられてまで、白妙から渡された住所まで駆けて行く。
形振り構わず髪を振り乱して、道行く人に住所を訪ね歩き、その場所へ辿り着くまでの道すがら知り合ったのが、大倉修一郎であった。
大倉は親切な男で、若汐と一緒に紙に書かれた住所の店を探してくれた。
「あの店だと思うよ。」と大倉が指さした店は立派な大店で、船着き場の階段を上がったすぐ前に立っていた。

若汐が裸足で、その店を目指して駆け上がると、ちょうど店の暖簾をくぐって出てきた勇吉と出くわした。
事実を確かめようとする若汐に、勇吉は戸惑った様子で、
店の中からは妻らしき人の「あなた、どうかなさったの?」という声が聞こえていた。
それから次の瞬間、乳飲み子を抱いた女性が暖簾をくぐって出て来て若汐を見たが、一向に動じず、難しい話なら中に入ってもらってはどうかと落ち着いて言った。

「この女は吉原の女だ。」と勇吉は妻に告げた。
すると「なんだぁ~吉原の…」と呟き、薄らと口元に笑いを浮かべて若汐を一瞥し「どんなお話があるか知りませんけど早くして下さいね。」と店の中へ消えた。

「見ての通り、俺の女房と子供だ。俺のこの世で一番大事な女房と子供だ。」
悪びれもせずキッパリと、そして真っ直ぐに若汐の顔を見据えて勇吉は言った。
「わかったら帰ってくれ。」
そう言われても、若汐にすれば納得出来るものではなかった。
「だったら、どうして?!どうして、年季が明けたら一緒になろうなんて言ったの?」と尋ねずにはいられなかった。
謝罪の気配など微塵もなく勇吉は開き直り、蔑んだように
「年季が明けたら一緒になる?俺はそんな事一度も思った事ねえよ。」と吐き捨てた。
そして「若汐という遊女となら遊んだが、海の匂いのするひーちゃんは、おまえが女郎になったって聞いた時にもう死んだんだ。」と言って若汐の手を振り解いた。
若汐が一途に信じた愛情も、勇吉にとっては、ただの遊びに過ぎなかったのだ。

「この愛だけは…」そう思い込んだのは自分の思いあがりに過ぎなかった。
若汐は目の当りにした現実に打ちのめされて、フラフラと元来た道を辿る。
大倉は、その様子の一部始終を見ていたが、あえて声は掛けずに、遠くから若汐の様子を見守っていた。

夕暮れの河原に蝉しぐれ。
夢から醒めた女郎がひとり。

さんざん泣き明かした後の河原で、やっと立ち上がり、
川風に身を晒していると、土手の上から「良かった!」という男の声が聞こえた。

振り返ると大倉が見下ろしている。
「倒れるんじゃにかと心配したんだけど、大丈夫みたいだね。」

涙と一緒に何かが若汐の身体から抜け落ちて行った。
もう迷わない…若汐は先ほどと全く違うしっかりとした足取りで吉原へと帰って行く。

一定の距離を置き、その後をずっと、大倉はついて歩いて来た。
若汐にお金を貸したという事もあったが、それよりも心配な気持ちの方が大きかった。

夕凪楼へ帰り着いた若汐に続き、大倉もまた夕凪楼の扉をくぐって中へ入ったのだが、若汐が足抜けしたのではないかと大騒ぎしていた最中の帰還だったので、大倉に気を留める者はいなかった。

この夜から、若汐は「張り店に出る。」と言い出した。
もうすでに部屋持ちになっていたのに、
そんな必要はないと、お兼が止めたが、何やら憑き物が落ちたようになっている若汐は、けっして譲らなかった。

張り店に座る若汐の耳に、いつかの如月の言葉が甦る。
「ここで生きて行こうと思ったら、心も身体の凍らせてしまう事だ。」
もう何も縋るもののなくなった今だから、心も身体も凍らせたい。


明治42年の春。
若汐は、夕凪楼の看板花魁にまで上り詰めていた。
それでもまだ張り店に出続けていた。
出ても出なくても(カッコつけてもつけなくても)花魁は花魁だから。
男に抱かれ穢されて、春を売るのが商売だから。
それなら晒し者でいいと。

そんな時、あの大倉修一郎が、画材を持って、若汐を訪ねて来る。
彼は、肉欲の対象として若汐を見ていないという事を、そういった行動で示したかったのやもしれない。
だが、そんな客は初めてだったので、若汐は戸惑った。
からかわれているのかと思って、一旦は断ろうともした。
だが大倉は「君の時間を買うと思ってくれ。」と言って食い下がったので、結局は申し出を受け入れた。

ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その4へ続く。

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ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その1の続き。

ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その2



大部屋所属の先輩花魁、如月は、冷めていて突っ張っている風で、思った事をズバズバ口にする。
「あんな風だから、いい年して未だに部屋持ちにもなれないんだ。」と、お兼は如月を、厄介者呼ばわりしていた。

お兼が、挨拶だと言って久野を連れて、部屋持ちの花魁の部屋を偉い順から順番に回った。

店の筆頭である御職(おしょく)の左京は、ハッとするような美人で、久野は暫し、左京の姿に、ぼんやりと見とれていた。
部屋に置かれた調度品も、それはそれは見事なもので、田舎娘の久野にとっては見る物すべてが珍しい。
「おしげりなんせ(廓言葉で「頑張ってね」という意味)」左京は、おっとりとした優しい口調で話す。
お大臣のお馴染みが多いという左京。

二番目の二枚目は、花里で、彼女はちょっと品がない。
いつも馴染み客に買ってもらったかんざしや櫛を、他の花魁に売りさばいて熱心に貯金に励んでいた。

三番目の三枚目の紹介は、どうした事か?無かった。

その他、大勢の遊女が雑魚寝をしている大部屋は端部屋。
この部屋は、ざわざわと騒がしい。
寝たり、起きたり、食べたり、店に出る準備をしたりと、皆が一斉にする部屋だ。
食事は基本的に、ご飯とみそ汁と漬物は毎日支給されるが、それ以外のおかずが欲しければ、自分のお金を出して買わねばならない。

その他、暮らしに必要なすべてのものは、お金を出して買わねばならず、一見すると待遇の良いように見える部屋持ちも、家具や衣装を、店に借金して買い揃えており、おいそれと借金が減らない仕組みになっている事を端部屋の女郎たちが教えてくれた。

吉原は出入り口は大門ただ一つしかなく無断で大門を出て行く事は、けっして許されない。
それをしたら足抜けと言って厳しい罰が与えられる。
花魁が大門をくぐって外へ出られるのは年季が明けた時、身請けが決まった時、
親が死んだなどの特別な事情があった時の3つだけ。
「くれぐれも足抜けなどはせぬのが身のため。」と、お兼ねは、強い口調で久野に言って聞かせた。


提灯に火が点り、大門のネオン電球も点けられて、吉原の夜が始まった。
張り見世の柵の外から居並ぶ遊女たちを覗き、男たちが品定めをしている。
女は商品、男はお客。
華やかに見えて、そんな男尊女卑が当たり前の時代。
男衆らも、客の呼び込みから案内まで忙しく立ち働く。


10日後。
昼間の事。
久野が、謝罪で一杯の母からの手紙を読んで涙ぐんでいると「そんなんじゃ、ここで生きて行けないよ!」と言う声が背後から飛んだ。
如月である。
「ここで生きて行くには心も身体も凍らせてしまう事。それしかない。それが出来れば、こんな所でも生きて行ける。行き抜いて行ける。」
冷たい人のように見えて、如月なりの精一杯のアドバイスをしてくれていた。
案外といい先輩なのだ。
この後、久野は如月に聞いて、一人で「花魁道中」を見物に行った。
桜の花びらが舞う目抜き通りを、ゆっくりと優雅に進む花魁はそれはそれは美しく、そして、この時ばかりは精一杯に輝いて誇らし気でさえあった。

見物中、久野は、自分と同じ年恰好の娘、浅井雪乃と知り合う。
雪乃は、吉原一と言われる大店の近江楼の女郎見習いで、どうやら久野と同じような時期に、この地へやって来たらしい。
雪乃は、前向きで明るく屈託のない娘で、二人はすぐに打ち解けた。
けれど久野は、雪乃の腕に殴られたアザがあるのを見てしまった。


源氏名も若汐と決まり、役所より営業許可も下り、健康診断も済ませ、もう今夜からでも、店へ出られるようになった久野だが、嬉しいと言うよりも怖い。
化粧をしてもらって髪を結い衣装を纏うと、自分でも見違えるように美しくなった。
張り見世に出て身を固くしていたが、瞬く間に客から指名が入り、初仕事に挑む事となった。
実は、久野には、故郷に将来を誓った幼馴染がいた。
名を岡部勇吉と言い、半年前には、横須賀の海軍に入ると言って故郷を出て行った。
久野にとっては初恋の人で、今でも勇吉の事を想っていたが、彼との夢は叶わず、これから自分は処女を他の見ず知らずの男に捧げようとしている。
それは、とても悲しく辛い事の筈であったが、如月が言うように、身も心も凍らせようと意識して、男の待つ部屋へと向かった。
そして…身を固くして必死で目を閉じたままで試練の夜に耐えた。

夏が来て、この町の暮らしにも少しは慣れた頃の事、
若汐は、検診帰りに道でばったり雪乃に会った。
雪乃も、白妙と言う源氏名をもらい、互いに、そんな呼び名は慣れないと笑い合う。
家族の話になると、雪乃は両親と祖母と弟と妹が2人ずつの大家族だと言った。
二人でいる時はすっかりと少女に戻りいつも笑いながら話が弾む。
雪乃が「※4花いちもんめ(花一匁)」という歌の意味を話し終えた時に、足抜けをして追いかけられている花魁を見た。
[※4 一般的には価格一匁[注釈 1]の花を売り買いする際のやり取りだとされるが、「花」は若い女性の隠語であり、一人が一匁を基本とする値段で行われた人買いに起源があるとの説もある。」

逃げた花魁は鶴尾と言い、追手の男たちに追い詰められて、懐から小刀を出して「逃げ切ってやる!」と叫ぶと自分の首を切った。
血しぶきが飛び、鶴尾は切り口を押さえながら道の上に倒れ込むと悶え苦しんだ。
手当をするでもなく、もう使い物にならないと思ってか、男たちは、その場を去ろうとした。
去り際に、青い顔をして、その出来事に見入っていた若汐と白妙に気付くと顔に血しぶきを浴びた男が
「お前たちも女郎か。ならよく見ておけ。足抜けなんかしようとしたら、どういう事になるのか。」と言って、ゾロゾロと去って行った。

ある夜の事、夕凪楼を、勇吉が訪ねて来た。
勇吉は、張り見世の外から若汐を、怒りとも驚きともつかない目つきで見つめていた。
その後、若汐を指名してくれた勇吉を、若汐はどんな顔をして迎えて良いやらわからずに、ずっと俯いたままで目も合わせずに襖を開けて部屋に入った。
「そんなとこに突っ立っとらんで座れよ。」と言った勇吉の声は、荒ぶる事もなく穏やかなものであった。
勇吉は「妹が手紙で教えてくれたので久野が、ここにいる事がわかった。」と言った。
久野は今の自分の境遇と身なりを恥じ入り「こんな所で、こんな恰好で会いたくなかった。」と俯いたままで言う。
すると勇吉は「どこにおっても、どんな格好をしていても、ひーちゃんはひーちゃんじゃが!」と懐かしい呼び方のままに、優しい言葉を掛けてくれた。
その温かい言葉にやっとの事で久野は、顔を上げて勇吉の顔を見る事が出来た。
勇吉が「あの時の約束覚えとるか?」と聞き、今も同じ気持ちであると言うので、久野は勇吉の優しさにすっかりとほだされる。
そっと抱き締められて「やっぱり、ひーちゃんじゃ。ひーちゃんの身体は海の匂いがする。」と言われると、もう爪の先ほどの疑いようもなく、久野は勇吉の言葉を信じた。


冬が来る頃には、若汐は早くも部屋持ちとなる。
そんなある日の事、若汐が沈んだ顔でいると、如月が来て、此の頃、勇吉が訪ねてくれない事で気の晴れない若汐の胸の内を言い当てた。
そしていつものように痛烈なアドバイス。
「花魁は男に惚れさせるもんであって、惚れたりしたら地獄だよ。」と。
けれど若汐がもし本気ならば
「1人の男に惚れて惚れて惚れ抜いて、地獄の炎に焼かれるのもいい。」とも。

その如月には近頃、羽振りのよい馴染み客がついていた。
如月も、その男の事が気に入っているようで、彼の前では、これまで見せた事のないような晴れやかな笑顔を見せていた。

その夜、初雪が降り、若汐は如月と二人で、
漆黒の空から舞い落ちるその雪を眺めながら
「もし地獄に落ちて火に焼かれても、一人の男の事だけを想い生きて行く覚悟を決めた。」と告げた。
「待っていたら、いつか必ずそういう日が来るよ。
心も身体も溶けて火になる日。」
夜空を仰ぎながら、そう言った如月もまた、胸の中に、火になる覚悟を秘めていた。
どうしたのだろうか…そう思って、若汐が如月の横顔を見つめていると、それに気づいた如月は、フッと笑いを洩らして踵を返し、男の待つ部屋へと行こうとした。
だが、ふと歩みを止めると、思い出したように振り返り
「若汐ちゃん…ちゃんと生きて、必ずお母さんに会うんだよ。」と言い置き…それが若汐が如月と言葉を交わした最後であった。
その時の如月の様子がどうにも気掛かりで寝付けずに、若汐が夜中に如月と客のいる部屋の襖を開けて見ると、2人は手を取り合い死んでいた。

重クロム酸カリン服毒での心中であった。

ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その3へ続く。

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